禅 ZENで悟りを得るもエ〜ガね
わしは異業種交流会に入っているのですが、あまり出席していません。最近、新会員が加わり、その人は映画に関係する仕事をしているとのことだったので…映画の話をしようとイソイソ出かけたのです。
彼は『禅 ZEN』に携わったといってました。おそらく、この映画のことでしょう。
そんなこともあり、かつて観たこの作品を取り上げることにします。
レンタルDVD店で見つけながら、借りて観るまでに1年もかかった作品です。説教くさい映画だろうと思い、敬遠していたのです。
http://www.youtube.com/watch?v=fnWXt-3I1U4
http://www.youtube.com/watch?v=AB--V-De_LM
わしはもともと鎌倉仏教に興味があったんですよ。インドに生まれた仏教が永い歳月をかけて日本に伝来して、法然、親鸞、栄西、道元、一遍、日蓮という6人が開宗した。そんな鎌倉時代にも魅力を感じていました。
とはいっても、わしは無宗教です。比較宗教学とか文化としての宗教を探求することが好きなだけなのです。
『禅 ZEN』は道元の生涯を描く、いわば“説法”映画です。監督/高橋伴明。主演/中村勘太郎。
孤高の道元が座禅修行ののち、圧迫を受けて…越前で永平寺を開く。当然、道元禅師が人々に伝えようとした精神を真面目に描いていて、セリフには四文字熟語とかがいっぱいでした。
興味深いのは「弁道」という言葉。この世のあらゆるものは昔からそのままの姿でそこにあり、隠すことがない…というような説明。
「悟り」というのも、難しいことを習得することではなく、執着を捨ててあるがままを受け入れることだと諭す。考えることをするな、悟ろうとするなという。ただ、摂受するだけだという。そこには「非思量」という言葉さえも出てくる。
春は花、夏ほととぎす、秋は月。冬、雪さえてすずしかりけり。
そういう、当たり前のことを当たり前にそのまま感じ取ればいいのだという。それが「悟り」ならば…それほど簡単でそれほど難しいことはないでしょうね。
『死ぬまでにしたい10のこと』という洋画がありました。もしかすると、あの映画の主人公アンが達した境地もこれだったのかもしれません。
「じゃ、お先に」と遺書に書いて、47歳で亡くなったアニメの今敏監督のことも考えました。
道元禅師はいう。天に道あり。地に道あり。人に道あり。もって安穏なり。
「生」のとき、生よりほかにものはなく、「滅」のとき、滅よりほかにものはなし。
つまり、生も死もあるがまま。…なるほどと思う。 中村勘太郎の熱演もあり、わかったような気持ちになって思わず手を合わせてしまいそうでしたね。
CGを使わねば禅師の精神を表現できなかったのかとか…映画に関しては思うところもあったのです。でも、それ以上にわかりやすくありがたい映画でした。
観るまでに1年かかりましたが、観てよかったです。
余談ですが、“説法”映画といえば、大昔…無理やり連れて行かれて公民館で観た『人間革命』での丹波哲郎の演説が見事でした。丹波哲郎は『砂の器』などで演説調にしゃべる演技が上手でしたが、『人間革命』で開眼したのではないでしょうか。
この映画の権利は宗教団体が持っているので、一般的には観ることができないようで…映画としてよくできていただけに残念ですな。
それはともかく、『禅 ZEN』を観てわしなりに感じ取ったのは「死にがいのある生き方」ということでした。そういう意味で、この作品はわしの心の中で見事にシェイクしたといえるでしょう。
あらゆる映画をあるがままに受け入れる。それがわしの望みです。
異業種交流会の彼とは、こんな話題で語り合ってみたいものです。
本当は会員の方々から、人生を動かした映画について教えていただきたいのです。
でも、世の中の多くの人にとって…映画はそこまでの大きな存在ではないのかもしれませんな。