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この森で、天使はバスを降りた…もエ〜ガね

手元に「字幕の花園」という本があります。字幕翻訳家の戸田奈津子さんの著作です。映画好きのわしは当然、この人の名前をよく目にしていました。いつだったか何かで、翻訳料は(ヒット作であろうと)映画1本で20万円くらいだと聞きました。驚きましたよ。
おそらく、安いので彼女に依頼が集中したんでしょう。彼女にしても、字幕翻訳を安く請けることで仕事が広がり、映画人とも親しくなれるというミーハー的な計算があったのかもしれませんね。
ともかく、映画愛いっぱいの著作です。

今や字幕も、デジタルになってすっかり書体も変わりました。注意して観ないとそれに気づかないでしょうが、時代によって字幕スーパーの書体は微妙に違います。もともとわしは映画の「手書き」の字幕書体が好きでした。それは手塚マンガの手書きの文字にも似て、美しくて読みやすくて…魅力的でした。

もちろん、翻訳=意訳のおもしろさにも魅力を感じていました。たとえば、大昔の『カサブランカ』の「君の瞳に乾杯」というハンフリー・ボガードの有名なセリフは、原文では「Here's looking at you,kid」なんですね。大胆な意訳です。でも、何てシャレた翻訳セリフでしょう。

若い人の間では日本語吹き替え版を好む人が増えているようですね。わしは断然、字幕版を好みます。生の俳優の声を聴きたいですからね。
でも、知らない人も多いと思うんですが、実は外国映画を字幕で観る習慣があるのはほとんど日本だけなんですよね。他の多くの国では、映画は自国の言葉に吹き替える。だから、ハリウッドなどの俳優が日本に来て、自分の生の声で上映されていることを知り喜ぶんですよ。


原語の翻訳だけでなく、自分の気持ちを言葉にするのだって一種の翻訳でしょう。しょせん、言葉にできるのは気持ちの何パーセント。自分のほんとの気持ちを言葉にするのは難しいものです。言葉にしたからといって、理解してもらえるとは限らないですしね。
それを感じたのが…昔観た『この森で、天使はバスを降りた』という映画でした。

https://www.youtube.com/watch?v=sTCtlnZ4R9M

日本でいえば長野県とかのイメージの…森の奥の小さなギリアドという町に、バスに乗ってパーシーという若い女性がやって来る。町の者は彼女をよそ者として好奇の目で見て、排除しようともする。その軋轢を寡黙に描いています。

『この森で、天使はバスを降りた』はリー・デヴィット・ズロートフの監督作。主人公パーシーをアリソン・エリオットという新人女優(?)が演じていて、凛々しく孤独に満ちた表情が印象的でした。

ソソられるニクいタイトルですが、ちょっと覚えにくい(わしは「天使は、この森で〜」と覚えていた)。原題は『THE SPITFIRE GRILL』で、それは映画の舞台となる小さなレストランの名前です。スピットファイヤーとは戦闘機のこと。そんな説明はありませんが、背景にはベトナム戦争の影があるのではないでしょうか。『スピットファイヤー グリル』とすれば、『かもめ食堂』みたいなノリですが、アメリカ人なら原題から何かを感じ取ることができるのかもしれませんね。

テーマとしては「人を信じる」ということでしょうか。「人生のやり直し」や「チャンス」でしょうか。「人を表面的に見てはいけない」でしょうか。「人生は戦いだ」とか「戦いによって人の心を忘れてはならない」かもしれない。どれも、外れてはいない気がします。人間を讃え、信じようとしている作品です。

映画の中で、このギリアドという町を紹介する「道に迷う自然はあっても、都会のように人にまぎれる(迷う?)ことはない」という言葉があり、心地よく感じました。きっと、こういうところにテーマが隠れているんでしょうね。
森の冷たい空気感までが伝わってくる厳しい映画でしたが、温かい作品でした。

何かの拍子に、昔観た映画をふと思い出すことはありませんか? わしにとっては『この森で、天使はバスを降りた』がその一作です。いつだったか、レンタル屋さんで偶然見つけて…懐かしくて観たんです。内容はほとんど忘れてしまっていましたが、しみじみとよかった。
まったく話さない登場人物がいるんです。でも、実は多くを語っている。言葉はしょせん言葉ですよ。それを感じましたね。


「人は努力をしている限り、間違いを犯すものである」
そんなゲーテの言葉を思い出したネコタル爺でした。


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No title

麻酔須磨ホ

ナゾなゾゾゾ〜ン

♪あなたはダ〜レ?  ダレでしょね〜?

あなたはダ〜レ?  ダレでしょね〜?

大森だけが、知っているv-40...Hahahahahaha...

なぁゾーンな展開

実はねぇ…ふたりに絞られていたのだよ。アケチくん。
あの大森で、キミはバスを降りたのだろ?
キミだ。キネカッカッカッ!
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ネコ爺ことネコタル爺の高峰 至です。

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