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私の男になるもエ〜ガね

熊切和嘉監督の『私の男』を観ました。でも、わしは…映画の観賞方法を間違えたようです。

http://www.youtube.com/watch?v=poVoqV_kO0U
http://www.youtube.com/watch?v=q1MjpfE1cFc

わしは桜庭一樹の原作小説の1章だけを読んで映画を観たのです。プロローグあたりまでを読んで、次に映画って…。ところが、原作は6章まであって…過去へ過去へと遡る構成だったのです。
対して映画は時系列に構成されていた。つまり、わしが読んだ1章は…出だしではなく、映画の最後だったわけです。

原作は「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた」という文章から始まる。映像での赤い傘部分です。
貧乏なのに優雅。甘くけだるい雰囲気。原作小説の1章は…とても気に入りました。ずっと読んでいたい。終わらないでほしいとさえ思いました。でも、1章は結果の部分だったんですね。2章3章4章と…その原因が暗く深くおぞましく掘り起こされていく。

映画はよかったのです。言葉に頼らず、映像で語る。そういうところが好きです。ただ、映画のラスト部分は原作ほどの内容がなく、物足りなく感じました。映画を観ている人に…登場人物たちの気持ちがどこまで伝わるかなぁと心配にもなりました。
小説の1章を読んでいなかったら…こういう気持ちにならずに済んだでしょうね。今さらいっても仕方ないけど、映画を観てから読めばよかった。

小説の1章を読み出して驚いたのですが、主人公の淳悟はまるで浅野忠信のイメージそのものですね。この映画、キャスティングの段階で成功でしょう。
淳悟を演じる浅野忠信はもちろんよかったけど、花を演じる二階堂ふみもよかったのです。浅野忠信が主演男優賞なら、二階堂ふみにも賞をあげてほしかった。
以前、役所広司監督の『ガマの油』を観たとき、二階堂ふみにホレました。そのとき、彼女は満島ひかりクラスの女優になるだろうって思ったんですよ。
二階堂ふみは「演じる」とはいわず、「役に自分の身体を貸す」というような表現をしています。そういうところがいいですね。

熊切和嘉監督のことはよく知りません。『鬼畜大宴会』という作品で注目されたそうだけど、ヘルツォークの『小人の饗宴』みたいな映画かな。そういう種の映画を得意としているんでしょうか。今後に期待ですね。
昔観たATG映画の数々や、『贅沢な骨』の行定勳監督、『君は裸足の神を見たか』の金秀吉監督、『追悼のざわめき』の松井良彦監督などを思い出したりもしました。そういえば、彼女の匂いが付いた靴下とかを欲しがる変態的青年を主人公にした映画があったけど、監督も作品名も忘れた…。

原作の『私の男』は直木賞受賞作だそうです。知りませんでした。
驚いたのが…原作者である桜庭一樹のこと。女性なんですね、この人。1章は花の側の視点で書かれていて、男にここまでの女心が書けるなんて…と驚いたのです。作者が女性ならばわかる。わかる気がします。
ところが、2章は男の側から書かれている。巧みな男心の表現。この人、本当に女性だろうかと…やっぱり驚きます。

それにしても、人の道とは何でしょう。流氷が流れ着くと、そこは青白い大地になるという。どこまでが陸で、どこからが海なのかがわからなくなるという。人の道もそうなのでしょうか。
魂の奥底にある…人の孤独は何て深いものでしょう。うれしすぎるが故の悲しさ。淋しすぎるが故に渇望する気持ち…。恐ろしいほどに切ない。
許されるはずもない禁断の愛…。しかし、その道は誰が許さないのか。


6章まで読み終えました。
無垢な魂の中に存在する奈落。
それは…暗く深く純粋でドロドロです。
闇の中の姿はグロテスクで…切なく美しい。

わしの頭の中で、映画と原作小説がひとつになりました。
彼らは朽ち果てたのでしょうか。魂はひとつに同化したのでしょうか。
淳悟と花。あれからふたりはどうなったでしょう。どうしているんでしょうね。

できれば…わしの心の押し入れにずっとしまい込んで、出したくない気持ちもあるのです。

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