ショージとタカオを悼むもエ〜ガね
新聞の小さな記事で知った。布川事件の…タカオ氏が亡くなった。ドキュメンタリー映画を思い出す。
20歳で逮捕されて、64歳で無罪ですよ。自由になってから何年生きられたんだろう。 人生、丸ごと返せッですよね。
あ、すみません。亡くなったのはタカオ氏。ショージとタカオというのは…ドキュメンタリー映画のタイトルです。
https://www.youtube.com/watch?v=s8CbiSmc1UM
これをおもしろいといってはいけないのかもしれませんが、何年前になるのか…渋谷の[アップリンク]でおもしろい映画を観ました。『ショージとタカオ』という井手洋子監督の構成・撮影・編集によるドキュメンタリーです。「さしさわりのある映画特集」での特別上映でした。
以下はその当時のわしの映画日記…。
1967年に茨城県布川で強盗殺人事件が起き、その頃…不良だったショージとタカオはその犯人にされ、投獄されたのです。そういうことのようです。その後、ふたりは獄中から無実を訴えつづけて29年…。
仮釈放されてからのふたりのオッサンを13年間追ったドキュメンタリー映画。トータルで14年間の…冤罪に関わる記録がこの『ショージとタカオ』なのです。
小柄でガッシリしたショージと長身でヒョロッとしたタカオは…アボット&コステロのデコボココンビみたいで絵になりますね。
ヒネクレ者のわしなんか、ショーン・コネリーが主演の映画『理由(JUST CAUSE)』を思い出しました。冤罪だと信じて外に出したら実は…みたいなドンデン返しがラストにあるのかもなんてトンデモナイことを思ってしまいそうでした。 考え過ぎです。映画好きの弊害ですな(笑)。
この『ショージとタカオ』という映画、冤罪という重いことを描いていながら、決して重くはありません。リアルに伝わってくるものの…大上段に、警察の取り調べとか検察とか裁判とか司法制度を問うている映画ではないのです。そういう点では、花輪和一の体験マンガを映画にした崔洋一監督の『刑務所の中』のユーモアにも通じるのかもしれません。
かつて、「普通の女の子に戻りたい」と芸能界を去ったキャンディーズがいましたが、ここでは「普通のおじさんになりたい」という懸命なふたりのオッサンの姿を…上からでも下からでもなく、普通に記録しているのです。この普通さにとても好感を持ちました。
思わず笑ってしまうようなことも起こる。獄中に29年いて娑婆へ出たら、それこそ浦島太郎状態ですからね。例えば、20円だった電車賃は今、ずっと高い。切符の買い方もわからないとか、女子高生のスカートの短さに驚嘆するとかね。
20歳くらいで投獄されて、仮釈放されたのが50歳くらい。つまり、青春のすべてを獄中で過ごしているわけです。すごいことですよ。
やっと塀の外に出たのに…いろいろな新たな見えない塀が立ちふさがる。しかし、生きることへのオッサンパワーはすごい。就職が厳しいと「塀の中は3食付きだったからなぁ」なんてグチも出るものの…立ち向かって切り開いて行く。すごいですよ。
『ショージとタカオ』は決して芸術性の高い映画ではありません。最初のあたりはカメラもフラついてますしね。素人っぽい感じも受けます。
でも、生きる…生きている実感がある。活力がある。希望がある。わしが希望をもらったってことですけどね。わしはずっと娑婆にいるんだから、負けずにがんばらなくちゃってね。
気が重くなるような映画だろうと覚悟していたんですが、ここまでポジティブなエネルギーがもらえるなんて驚きでした。
30年近くも獄中にいた者ゆえでしょうが、梅の花の香りとか…日々のほんの些細なことの中に生きていることを発見する。そのことのありがたさを噛みしめている。人生を取り戻して…紡いで行く。そのオッサンの姿。わしは心打たれたのです。それを抽出したのは井手監督の手腕でしょう。
映画が終わってから、井手洋子監督らと近くの居酒屋で呑んで語り合いました。仮釈放から3カ月くらい撮るつもりが長くなったとか、費用がいくらかかったとか、英訳を付けて外国でも公開したいとかね。たのしい語らいの時間でした。映画制作への夢というか、まだわしにも情熱が残っているようです。
CG映画ばかりで食傷気味のこのごろ。マイケル・ムーアじゃないけど、今おもしろいのはドキュメンタリーかもしれません。
2時間半以上の長尺の『ショージとタカオ』ですが、最後までおもしろく観ることができました。その昔、原一男監督による『ゆきゆきて、神軍』というすばらしいドキュメンタリー映画がありましたが、それに匹敵するかもしれません。
タカオ氏の冥福を祈ります。合掌。
20歳で逮捕されて、64歳で無罪ですよ。自由になってから何年生きられたんだろう。 人生、丸ごと返せッですよね。
あ、すみません。亡くなったのはタカオ氏。ショージとタカオというのは…ドキュメンタリー映画のタイトルです。
https://www.youtube.com/watch?v=s8CbiSmc1UM
これをおもしろいといってはいけないのかもしれませんが、何年前になるのか…渋谷の[アップリンク]でおもしろい映画を観ました。『ショージとタカオ』という井手洋子監督の構成・撮影・編集によるドキュメンタリーです。「さしさわりのある映画特集」での特別上映でした。
以下はその当時のわしの映画日記…。
1967年に茨城県布川で強盗殺人事件が起き、その頃…不良だったショージとタカオはその犯人にされ、投獄されたのです。そういうことのようです。その後、ふたりは獄中から無実を訴えつづけて29年…。
仮釈放されてからのふたりのオッサンを13年間追ったドキュメンタリー映画。トータルで14年間の…冤罪に関わる記録がこの『ショージとタカオ』なのです。
小柄でガッシリしたショージと長身でヒョロッとしたタカオは…アボット&コステロのデコボココンビみたいで絵になりますね。
ヒネクレ者のわしなんか、ショーン・コネリーが主演の映画『理由(JUST CAUSE)』を思い出しました。冤罪だと信じて外に出したら実は…みたいなドンデン返しがラストにあるのかもなんてトンデモナイことを思ってしまいそうでした。 考え過ぎです。映画好きの弊害ですな(笑)。
この『ショージとタカオ』という映画、冤罪という重いことを描いていながら、決して重くはありません。リアルに伝わってくるものの…大上段に、警察の取り調べとか検察とか裁判とか司法制度を問うている映画ではないのです。そういう点では、花輪和一の体験マンガを映画にした崔洋一監督の『刑務所の中』のユーモアにも通じるのかもしれません。
かつて、「普通の女の子に戻りたい」と芸能界を去ったキャンディーズがいましたが、ここでは「普通のおじさんになりたい」という懸命なふたりのオッサンの姿を…上からでも下からでもなく、普通に記録しているのです。この普通さにとても好感を持ちました。
思わず笑ってしまうようなことも起こる。獄中に29年いて娑婆へ出たら、それこそ浦島太郎状態ですからね。例えば、20円だった電車賃は今、ずっと高い。切符の買い方もわからないとか、女子高生のスカートの短さに驚嘆するとかね。
20歳くらいで投獄されて、仮釈放されたのが50歳くらい。つまり、青春のすべてを獄中で過ごしているわけです。すごいことですよ。
やっと塀の外に出たのに…いろいろな新たな見えない塀が立ちふさがる。しかし、生きることへのオッサンパワーはすごい。就職が厳しいと「塀の中は3食付きだったからなぁ」なんてグチも出るものの…立ち向かって切り開いて行く。すごいですよ。
『ショージとタカオ』は決して芸術性の高い映画ではありません。最初のあたりはカメラもフラついてますしね。素人っぽい感じも受けます。
でも、生きる…生きている実感がある。活力がある。希望がある。わしが希望をもらったってことですけどね。わしはずっと娑婆にいるんだから、負けずにがんばらなくちゃってね。
気が重くなるような映画だろうと覚悟していたんですが、ここまでポジティブなエネルギーがもらえるなんて驚きでした。
30年近くも獄中にいた者ゆえでしょうが、梅の花の香りとか…日々のほんの些細なことの中に生きていることを発見する。そのことのありがたさを噛みしめている。人生を取り戻して…紡いで行く。そのオッサンの姿。わしは心打たれたのです。それを抽出したのは井手監督の手腕でしょう。
映画が終わってから、井手洋子監督らと近くの居酒屋で呑んで語り合いました。仮釈放から3カ月くらい撮るつもりが長くなったとか、費用がいくらかかったとか、英訳を付けて外国でも公開したいとかね。たのしい語らいの時間でした。映画制作への夢というか、まだわしにも情熱が残っているようです。
CG映画ばかりで食傷気味のこのごろ。マイケル・ムーアじゃないけど、今おもしろいのはドキュメンタリーかもしれません。
2時間半以上の長尺の『ショージとタカオ』ですが、最後までおもしろく観ることができました。その昔、原一男監督による『ゆきゆきて、神軍』というすばらしいドキュメンタリー映画がありましたが、それに匹敵するかもしれません。
タカオ氏の冥福を祈ります。合掌。