セッションするもエ〜ガね!
シンバルで頭を叩かれたような衝撃を受けた。『セッション』を観てから…頭の中でずっとそれが鳴り響いていた。それをどう書けばいいのか。
黒澤映画の『悪い奴ほどよく眠る』を観たとき、隣席の客が「魂ぬかれたぁ」とつぶやいていた。その表現でいうなら、この『セッション』は「魂ふきこまれたぁ」かもしれない。ラストセッションの場面では息することを忘れるほどだった。
https://www.youtube.com/watch?v=mZjUEIV2Ru4
舞台は名門のシャッファー音楽学校。主人公はそこに入学したジャズドラマーのアンドリュー。
アンドリューが有名指揮者のフレッシャーに出会い、狂気のスパルタ指導を受けながらも…くらいついていく。いわば、それだけの映画だろう。
でもその中に、今の世の中が…いや、わしが失ったかもしれないものがあった。世の中が甘くなりすぎているのだ。いや、わしが甘いのだ。生ぬるい。だから、衝撃を受けたのだ。
スパルタ教師がいう。最も危険な言葉が「グッドジョブ(上出来)だ」と…。陳腐なデキを認めるから世の中が甘くなるのだとばかりに…。
褒めて生徒を伸ばす教師ではない。その逆で、まるで軍隊のように生徒を罵倒する。手も出る。物も投げる。生徒を期待以上のレベルに押し上げるために…。教師は完璧主義で、本物を目指しているのだ。次のサッチモやチャーリー・パーカーを育てたいのだ。その病的なまでの執念…。
2014年のアメリカ映画。脚本・監督がデミアン・チャゼル。主人公生徒がマイルズ・テラー。そして、鬼教師をJ・K・シモンズが演じている。確か、『スパイダーマン』のときの新聞社のおエライさんですよね。
わしの頭に突き刺さるものがあった。それを探求しつつ…さらに書いてみよう。
その昔、手塚治虫先生のお手伝いをしたことがあった。そのときのことを思い出す。
手塚先生は鬼教師と違って、わしらにはどこまでも温厚だった。でも、鬼教師に負けないくらい自分には厳しかった。その情熱、本物志向の凄まじさに圧倒された。熾烈極まる現場。納得いかないからと3度も4度も描き直しをする。他の複数の仕事と同時進行なので…当然、寝る時間などない。
わしの隣席で作業する人が「あんなのを見せられたら…たまりませんよね」とつぶやいた。彼も高名なマンガ家だったと思うが、挨拶する時間すらなかった。でも、彼の気持ちはよくわかる。「手塚先生のような大天才があそこまで努力をするなら…ぼくら凡才はどうすればいいんだ」といいたかったのでしょう。
話がズレたが、ものをつくる…本物をつくるという意味では同じでしょう。
クリエーティブはかくも過酷で…すばらしい。
そういえば、高名なジャズピアニストとささやかな交流を持った時期がある。その頃はジャズというものが難しくてよくわからなかった。今回、『セッション』にここまで心動かされたのは…この頃のことも影響しているのかもしれない。
驚いたのはDVDのオマケ映像。別の主人公俳優を使ったシークェンスが収められていた。ということは…何人かの主人公役候補の俳優に演技をさせて、誰が最適かを選んだということだ。演奏場面もあったから、それぞれが猛特訓をしたのだろう。マイルズ・テラーが勝ち残ったのだ。
映画のつくり方からして狂気の本物志向。圧倒される。
『セッション』に余韻などない。余韻は自分でつくれとばかりにブツッと終わる。
人生を変えるほどの映画、わしは好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=2HCQYufdJoQ
黒澤映画の『悪い奴ほどよく眠る』を観たとき、隣席の客が「魂ぬかれたぁ」とつぶやいていた。その表現でいうなら、この『セッション』は「魂ふきこまれたぁ」かもしれない。ラストセッションの場面では息することを忘れるほどだった。
https://www.youtube.com/watch?v=mZjUEIV2Ru4
舞台は名門のシャッファー音楽学校。主人公はそこに入学したジャズドラマーのアンドリュー。
アンドリューが有名指揮者のフレッシャーに出会い、狂気のスパルタ指導を受けながらも…くらいついていく。いわば、それだけの映画だろう。
でもその中に、今の世の中が…いや、わしが失ったかもしれないものがあった。世の中が甘くなりすぎているのだ。いや、わしが甘いのだ。生ぬるい。だから、衝撃を受けたのだ。
スパルタ教師がいう。最も危険な言葉が「グッドジョブ(上出来)だ」と…。陳腐なデキを認めるから世の中が甘くなるのだとばかりに…。
褒めて生徒を伸ばす教師ではない。その逆で、まるで軍隊のように生徒を罵倒する。手も出る。物も投げる。生徒を期待以上のレベルに押し上げるために…。教師は完璧主義で、本物を目指しているのだ。次のサッチモやチャーリー・パーカーを育てたいのだ。その病的なまでの執念…。
2014年のアメリカ映画。脚本・監督がデミアン・チャゼル。主人公生徒がマイルズ・テラー。そして、鬼教師をJ・K・シモンズが演じている。確か、『スパイダーマン』のときの新聞社のおエライさんですよね。
わしの頭に突き刺さるものがあった。それを探求しつつ…さらに書いてみよう。
その昔、手塚治虫先生のお手伝いをしたことがあった。そのときのことを思い出す。
手塚先生は鬼教師と違って、わしらにはどこまでも温厚だった。でも、鬼教師に負けないくらい自分には厳しかった。その情熱、本物志向の凄まじさに圧倒された。熾烈極まる現場。納得いかないからと3度も4度も描き直しをする。他の複数の仕事と同時進行なので…当然、寝る時間などない。
わしの隣席で作業する人が「あんなのを見せられたら…たまりませんよね」とつぶやいた。彼も高名なマンガ家だったと思うが、挨拶する時間すらなかった。でも、彼の気持ちはよくわかる。「手塚先生のような大天才があそこまで努力をするなら…ぼくら凡才はどうすればいいんだ」といいたかったのでしょう。
話がズレたが、ものをつくる…本物をつくるという意味では同じでしょう。
クリエーティブはかくも過酷で…すばらしい。
そういえば、高名なジャズピアニストとささやかな交流を持った時期がある。その頃はジャズというものが難しくてよくわからなかった。今回、『セッション』にここまで心動かされたのは…この頃のことも影響しているのかもしれない。
驚いたのはDVDのオマケ映像。別の主人公俳優を使ったシークェンスが収められていた。ということは…何人かの主人公役候補の俳優に演技をさせて、誰が最適かを選んだということだ。演奏場面もあったから、それぞれが猛特訓をしたのだろう。マイルズ・テラーが勝ち残ったのだ。
映画のつくり方からして狂気の本物志向。圧倒される。
『セッション』に余韻などない。余韻は自分でつくれとばかりにブツッと終わる。
人生を変えるほどの映画、わしは好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=2HCQYufdJoQ