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マン・ハントされるもエ〜ガね

28席しかない横浜西区藤棚商店街の小さな映画館…。[シネマノヴェチェント]のことは半年ほど前から知っていました。でも、遠すぎて…。正直、片道交通費1000円かけて行くなんてバカみたいという思いもあったのです。

自ら映画を買いつけて、配給権(上映権)を取り、字幕はプロジェクターでかぶせ、自分の小屋(映画館)で…という経営者の映画愛に触れてみたい。行かねばなるまい。経営者とも話さねばなるまい。そんな思いが日増しに募って…ついに行ってきました。

横浜駅の隣。京急の戸部駅から歩いて10数分。建物の外壁に俳優の顔がたくさん飾られており、思わず見とれてしまいました。
[シネマノヴェチェント]は2階です。経営者のMさんはいなかったものの…小屋にある印刷物などから、映画への熱い思いをしっかり受け止めることができましたよ。

スクリーン席は28しかないのですが、待ちの場所もそれくらいの席があります。そこで、軽い食事やお酒だって呑める(料金500円)。元がカラオケパブだった名残りなのです。観賞後に呑んで語り合うもいい。観てから呑むか、呑んでから観るか(笑)。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=22617

『恐るべき相互殺人』がかかっているとばかり思っていました(料金1500円)。
ところが、時間が合わずに『マン・ハント』を観ることになったのです(料金1000円)。未見だったフリッツ・ラング監督の1941年の作品。SF映画の原点にして頂点といわれる…あの『メトロポリス』で知られる…あのフリッツ・ラングの作品に出会えるとは思ってもいませんでした。

『マン・ハント』は…つまり人間狩りで、ヒトラー暗殺計画に巻き込まれていく男の逃避行を描いています。出だし、主演のウォルター・ピジョンが腹這いになって長距離銃をかまえる。照準器の丸の中には…。狩猟スポーツなのか暗殺を意図したものか。拷問のあとの影の使い方の見事さ…。光と影は後のフィルム・ノワールを感じさせます。
ウォルター・ピジョンは逃走の途中でジョーン・ベネットと出会うのですが、昔の女優は美しい。地下鉄の線路内でのサスペンスフルな表現や、洞窟の内と外との対決場面も興味深かったですね。

今の映画は「あぁ、おもしろかった。で、何を観たんだっけ?」ということも多い。その点、昔の映画はしっかりと心に下りて来る。余韻があるんですね。

それにしても、1941年の作ということはヒトラーが自害する数年前です。ほとんどリアルタイムじゃないですか。よくつくることができたものです。ドイツ映画の巨匠がアメリカに渡ってつくった? チャップリンが『独裁者』をつくったときのように? そのあたりのことはわかりません。

観ながら…手塚マンガを思い出したりもしました。「黄金のトランク」とか、もっと古い「化石島」…。影の使い方とかね。思いを共有しているような…というか、虫先生はこういう映画を子どもの頃にいっぱい観ていたんだろうなぁっていうのをスクリーンから感じて幸せでした。手塚マンガのミームを通してトキワ荘とか、後のマンガ家たちにも伝播していったのだと思う。
だけど、映画が公開されたのはいつだろう。

字幕にも懐かしさが溢れました。認識している人は多くないでしょうが、字幕書体というのは時代とともに変化しています。『マン・ハント』の頃の書体は初期の…いかにも映画の字幕の文字なんですよね。

『マン・ハント』の他、何日おきかで『暗黒街の弾痕』『恐怖省』『外套と短剣』『月世界の女』をやっていたみたいでした。全部観たかった。特に『月世界の女』を観たいと思って聞いてみたら、弁士付きでの上映のため、予定が決まっていないようでした。
考えてみれば、『メトロポリス』にしても…わしは後になって音楽を付けて観やすくしたジョルジオ・モロダー版で観ているのです。元は無声映画なんですよね。
今回がフリッツ・ラング特集の2回目とのことだったので、他にもやってたんですねぇ。

https://www.youtube.com/watch?v=rtzTcqekPZI

わしは吉祥寺の[バウスシアター]によく行ってました…。そこの座席が[シネマノヴェチェント]に使われていたんですよ。思いがけない“再会”でした(笑)。

古い映画を古い小さな映画館で観る。それがそこまで贅沢で幸せな…至福の時間になるとは思いませんでした。そこまで感じるとは…自分でも驚きましたよ。懐かしさが新鮮でもありましたね。あ、古い映画館というのは昔形式のフィルム上映という意味ですよ。温故知新ですな。

それにしても客が少ない。少なすぎる。もったいない。もったいなすぎる。
片道1000円かけて行くなんてバカみたいと思いつつ、多分…わしはまた行くでしょう。旅行気分でね。そう、源流巡りの旅ですよ。



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