TENETで頭パニックもエ~ガね
IMAXで『TENET テネット』を観た。ややこしいSFアクション映画だった。
時間の逆行を扱っているとのことだったので、フィルムの逆回しくらいをイメージしていたが…そんな生易しいものじゃなかった。観た人がテネッて後ろ歩きをマネしてケガしないことを祈りたい(笑)。
『TENET』は『メメント』『インセプション』『インターステラー』など、時間に関する映画を撮ってきたクリストファー・ノーランの監督作だ。
もちろんわしはすべて観ている。『ダークナイト』(ダークナイト・トリロジー)も『プレステージ』もね。
思い出したのが『2001年宇宙の旅』のパンフに書かれていた「観客がこの映画を一度で理解したら、我々は失敗したことになる」という言葉。ノーラン監督がキューブリック監督を崇拝していたのは知られているし、つくった作品を観ればそれはわかる。わしはノーラン監督のしたたかさが好きだ。
理解できなければ置いていくぞ的な魅力は両監督に通じるし、独自の世界…発想を映像そのもので伝えようとするところも似ていると思う。映画はかくありたい。
ただ、『2001年宇宙の旅』が製作費を回収するのに何年もかかったのに対して、ノーランの監督作は大ヒットしている。映像作家として自分がつくりたいものをつくり…作品性と大衆娯楽性を兼ね備えている。そこがクリストファー・ノーラン監督のすごいところだろうな。
たかが映画のために本物の旅客機を購入してビルにぶつけるなんて…ノーラン監督以外に誰がやるだろう。
TENETという言葉は信条とか主義の意味らしいが、ポンペイ遺跡のラテン語による最古の回文から取られたという。回文…つまり、前から読んでも後ろから読んでも同じ「SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS」からのようだが、これって映画そのものを暗示してるんじゃないかな。
名もなき主人公は暇があれば体を鍛えている。いいね。演ずるジョン・デヴィッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの長男だ。わしは知らなかった。
彼がロバート・パティンソン扮するニールと行動するあたり、バディ映画かスパイアクションものだ。キャット役のエリザベス・デビッキは学校の塀より背が高い…。
それにしても時間とは何だろう。哲学者アリストテレスによれば、物体が運動することによって時間は存在するのだという。
時間は伸びたり縮んだりするものだろうか…。『TENET』の時間の逆行はタイムトラベルとは違う。10分前に行くためには10分かかる。でも、時間の逆行ってどういうことだ?
光の“ドップラー効果”によれば、遠ざかっていく光は赤く見え、近づいてくる光は青く感じるという。それに合わせてなのか、映画では順行者は赤、逆行者は青で表現される。そう、時間の順行と逆行がひとつの画面に同時に出てくる。だから、ややこしい。
そういえば、映画の最初と最後のワーナーのマークも同じように色分けされてたっけ。
ともかく、『TENET』は忙しくてややこしい。もちろん、それがこの映画の魅力だ。一瞬たりとも飽きさせない。めまいがするほど。
アルゴリズムによってエントロピーを減少? それで逆行? エントロピーの増大の向きが時間の流れ? 陽電子? 量子力学? 粒子の対消滅が起こる? 過去と未来から攻撃? 等々、これらはわかるようで…厳密にはまったくわからない。
原因と結果が入れ替わったりもするし…頭がパニックで、腑に落ちないところがたくさんある。
説明する女性科学者にしても「頭で考えるな。感じろ」とかいってた(笑)。そうするしかない。今まで観たこともない映像体験…! それは間違いない。楽しめばいい。わからなくても楽しめるのだ。
https://youtu.be/NGae7WPNhb0
ルドウィグ・ゴランソンの音楽がよかった。すごく映像に合ってる。オーケストラのメンバーを一同に集められず、個々の演奏家の音楽を集めて重ねてつくったらしい。深く重く心に響く。
ケネス・ブラナー扮するセイターのことを考えた。時間を行き来してたと思われる暴力的な超ワルいヤツだが、彼は孤独だっただろうな…と。
解釈は人それぞれ。『カサブランカ』のセリフに似せたニールの言葉。母を守ってくれた主人公のためだったとしたら…? もしかして、彼はキャットの息子だったとしたら…? わしもこの仮説に1票…!
過去と未来のはざまの一瞬の“今”が切ない。
時間の逆行を扱っているとのことだったので、フィルムの逆回しくらいをイメージしていたが…そんな生易しいものじゃなかった。観た人がテネッて後ろ歩きをマネしてケガしないことを祈りたい(笑)。
『TENET』は『メメント』『インセプション』『インターステラー』など、時間に関する映画を撮ってきたクリストファー・ノーランの監督作だ。
もちろんわしはすべて観ている。『ダークナイト』(ダークナイト・トリロジー)も『プレステージ』もね。
思い出したのが『2001年宇宙の旅』のパンフに書かれていた「観客がこの映画を一度で理解したら、我々は失敗したことになる」という言葉。ノーラン監督がキューブリック監督を崇拝していたのは知られているし、つくった作品を観ればそれはわかる。わしはノーラン監督のしたたかさが好きだ。
理解できなければ置いていくぞ的な魅力は両監督に通じるし、独自の世界…発想を映像そのもので伝えようとするところも似ていると思う。映画はかくありたい。
ただ、『2001年宇宙の旅』が製作費を回収するのに何年もかかったのに対して、ノーランの監督作は大ヒットしている。映像作家として自分がつくりたいものをつくり…作品性と大衆娯楽性を兼ね備えている。そこがクリストファー・ノーラン監督のすごいところだろうな。
たかが映画のために本物の旅客機を購入してビルにぶつけるなんて…ノーラン監督以外に誰がやるだろう。
TENETという言葉は信条とか主義の意味らしいが、ポンペイ遺跡のラテン語による最古の回文から取られたという。回文…つまり、前から読んでも後ろから読んでも同じ「SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS」からのようだが、これって映画そのものを暗示してるんじゃないかな。
名もなき主人公は暇があれば体を鍛えている。いいね。演ずるジョン・デヴィッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの長男だ。わしは知らなかった。
彼がロバート・パティンソン扮するニールと行動するあたり、バディ映画かスパイアクションものだ。キャット役のエリザベス・デビッキは学校の塀より背が高い…。
それにしても時間とは何だろう。哲学者アリストテレスによれば、物体が運動することによって時間は存在するのだという。
時間は伸びたり縮んだりするものだろうか…。『TENET』の時間の逆行はタイムトラベルとは違う。10分前に行くためには10分かかる。でも、時間の逆行ってどういうことだ?
光の“ドップラー効果”によれば、遠ざかっていく光は赤く見え、近づいてくる光は青く感じるという。それに合わせてなのか、映画では順行者は赤、逆行者は青で表現される。そう、時間の順行と逆行がひとつの画面に同時に出てくる。だから、ややこしい。
そういえば、映画の最初と最後のワーナーのマークも同じように色分けされてたっけ。
ともかく、『TENET』は忙しくてややこしい。もちろん、それがこの映画の魅力だ。一瞬たりとも飽きさせない。めまいがするほど。
アルゴリズムによってエントロピーを減少? それで逆行? エントロピーの増大の向きが時間の流れ? 陽電子? 量子力学? 粒子の対消滅が起こる? 過去と未来から攻撃? 等々、これらはわかるようで…厳密にはまったくわからない。
原因と結果が入れ替わったりもするし…頭がパニックで、腑に落ちないところがたくさんある。
説明する女性科学者にしても「頭で考えるな。感じろ」とかいってた(笑)。そうするしかない。今まで観たこともない映像体験…! それは間違いない。楽しめばいい。わからなくても楽しめるのだ。
https://youtu.be/NGae7WPNhb0
ルドウィグ・ゴランソンの音楽がよかった。すごく映像に合ってる。オーケストラのメンバーを一同に集められず、個々の演奏家の音楽を集めて重ねてつくったらしい。深く重く心に響く。
ケネス・ブラナー扮するセイターのことを考えた。時間を行き来してたと思われる暴力的な超ワルいヤツだが、彼は孤独だっただろうな…と。
解釈は人それぞれ。『カサブランカ』のセリフに似せたニールの言葉。母を守ってくれた主人公のためだったとしたら…? もしかして、彼はキャットの息子だったとしたら…? わしもこの仮説に1票…!
過去と未来のはざまの一瞬の“今”が切ない。