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セールスマンを考えるもエ~ガね

レンタル店に忘れられたように置かれていたDVD。前からずっと気になっていたイラン映画『セールスマン』を借りてきた。

https://youtu.be/2pzMyDpOijk

1週間レンタルなので、読書のようにちょっとずつ観た。知らない俳優ばかりだし、アメリカ映画に比べるとお金がかかっていないし…とにかく、地味なのだ。アメリカ映画に慣れていると退屈とさえ感じる。
気づいたら1日オーバーしていて…初めて延長料金を支払った。

最近観たアン・リー監督の派手なアメリカ映画『ジェミニマン』とは対照的だ。『ジェミニマン』は1秒間24コマじゃくて100コマ以上? ハイフレームレート? 映画はどこまで進歩するんだろう。
3Dではなく、通常版でしか観ていないが、それでも技術の進歩による革新映像のすごさはわかる。

でも…それなのに、今のわしの心に残っているのは地味な『セールスマン』のほうなのだ。これはどういうことだろう。

『セールスマン』はアスガー・ファルハディの監督作品。分野としてはサスペンスかな。

夫は教師で、夫婦は小劇団に所属している。アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の準備中だ。
土地開発なのか、建物に住めなくなり夫婦は引っ越すが、新居には前の住人の荷物が…。
そして、妻が何者かに襲われるという事件が起こる…。

イランの街並み。日常生活の中にある落とし穴。映像は暗示的に写し出されていく。そのせいでよけいに心に残るのだろうか。
おそらく、『セールスマン』には観る側に考える余裕が残されているんじゃないかな。何があったんだろう。あれからどうしただろうと考えてしまった。

スピーディで至れり尽くせりだと、逆に心に残らないということかもしれない。いや、一概にそれはいえないかな。他の人の意見を聞いてみたいところだ。


愛の調べを聴くもエ~ガね

何と1947年の映画だ。クラレンス・ブラウンの監督作で、『愛の調べ』という。
主演はキャサリン・ヘプバーンで、クララ・シューマン…つまり、シューマンの奥さんの半生を描いている。

ブラームスやリストなども出てくる。映画的脚色もあるのだろうが、基本はクララの伝記ものだ。
わしは彼ら音楽家仲間の交流や師弟関係とかを詳しく知らなかった。だから、勉強になった。

ロバート・ウォーカー演じるシューマンは作曲が認められず、だんだんとヘンになっていく。クララもピアニスト。彼女は妻として夫シューマンを助けようとする。

病室で、シューマンが「新しい曲ができたよ! もうダメかと思ったら浮かんできたんだ。聴いてほしい」とクララに奏でる。でも、それは…彼自身が若いときにつくった「トロイメライ」…。

『哀愁のトロイメライ クララ・シューマン物語』や『クララ・シューマン 愛の協奏曲』の源流が、この『愛の調べ』なのだろうな。

恋愛映画的な味付けが強い。が、それよりもわしは…芸術家の苦悩やひたむきな挑戦というものに興味を持った。共感もした。よかった。

音色が心地いい。こんなふうに弾いてもらえたらピアノも幸せだろうな。と思ったら、ピアノ演奏はルービンシュタインの吹き替えだった。


50回目のファーストキスをするもエ~ガね

ピュアな映画は好きだが、わしは恋愛映画が苦手だ。大人のどろどろしたベタな恋愛映画はほとんど観ない。現実でも起こりうることをわざわざ映画で観たくないってことかもね。

逆に、西荻の居酒屋のオヤジは…顔に似合わず、恋愛映画しか観ない。で、オヤジに薦められて『50回目のファーストキス』を観た。

https://youtu.be/uRbLbJoyzwM

DVDでだが、リメークの邦画版を観てから…つづけて元のアメリカ版を観た。
題名は共に同じ『50回目のファーストキス』だ。もちろん、映画の存在は知っていたが、この手の映画は苦手なのでスルーしていた。

驚いたことに、ストーリーはもちろんカメラワークにいたるまでほとんど同じ。オオゲサにいえば配役が別なだけ。リメークといってももっと違うと思っていた。

でも、大きく違うところもある。
邦画版での主人公は旅行コーディネーターをしながら星の研究をしているが、元の洋画版では水族館勤務だ。
ロマンティックにするために邦画では星空にしたのかと思ったが、水棲動物の調教とかに時間がかかるせいかもしれない。多分、そうだろうな。

記憶が短時間しかもたないという設定はよくある。わしは『メメント』が好きだった。邦画だと『博士の愛した数式』というのもあったな。

『50回目のファーストキス』は記憶が一日しかもたない女性に恋をする話だ。車の事故によってそうなるわけだが、何とかって病名をいってたから…実際にあるのだろう。
とにかく、記憶が一日だから、毎日が初対面だ。そこから生まれる恋愛コメディってとこかな。

https://youtu.be/cXlzaK_GFBY

わしはこの手のをほとんど観ないから新鮮だった。
元の洋画版のほうが笑える…かもしれない。とにかく、同じ場面を比べて観るとおもしろい。つくる側から観る。それがわしの映画のたのしみ方かもね。

今度、リメークの邦画版をテレビでやるらしいが、テレビを持たないわしには縁のない話だ。
テレビがなくなって20年くらい。テレビがないとさぞかし不便になるかと思ったが、まったくそういうことはない。

そういえば…テレビ局のカメラの前で話したとき、あとでディレクターが「番組はどうでしたか」と聞いてきたが、「テレビがないので」とはいえなかったっけ(笑)。


ジョーカーに衝撃を受けるもエ~ガね

ガツンと来た。衝撃を受けて…しばらく、ウダウダ日記を書くことができなかった。トッド・フィリップス監督の『ジョーカー』のことだ。

https://youtu.be/C3nQcMM5fS4

その衝撃は…そう、大昔に観たスタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』に近い。魂に突き刺さる。刺さった心のトゲはながい間抜けない。
心理学でいうところのペルソナ…。連想ゲームのように、『Vフォー・ヴェンデッタ』という映画も思い出した。もちろん、『ダークナイト』も…。

映画が映画だった時代。というとクレームが来るかもしれない。
でも、最近の派手なヒーロー映画とかを観ていると…映画というよりアトラクションに近いと感じてしまう。「あぁ、おもしろかった。で、何を観たんだっけ?」ということがよくある。
映画の役割が違ってきてるんだろうな。実写とアニメの境界線がなくなりつつある。ばかりか、ゲームとの境もあいまいになってきている気がする。

もしかすると、そういうことへのアンチテーゼとして『ジョーカー』はつくられたんだろうか。
「バットマン」の悪役ジョーカーがいかにして生まれたか。心やさしく底知れぬほど孤独なアーサーが…いかにしてジョーカーに変貌していったか。
内容は映画としてのオリジナルだが、キャラを借り、この設定を使うために製作費の多くをDCコミックス側に支払ったと聞く。

アーサー=ジョーカーを演じるのがホアキン・フェニックスだ。アカデミー賞の主演男優賞ものだろう。体重を24キロだか落として撮影に挑んだというがまさに狂気だ。映画は…アーサーが何を感じ、どう思ったかをセリフに頼らず伝えてくれる。
かつて、兄弟のリバー・フェニックスから「こんな俳優になれ」とロバート・デ・ニーロ主演の映画を見せられたという。今作では、そのデ・ニーロと共演している。

最近は平気でながい映画がつくられるが、『ジョーカー』は2時間。そういうところも、映画が映画だった時代を意識しているのかもしれない。
おもしろくて、哀しくて、美しい。映画好きの…映画がわかっている人向きの本物の映画だろう。何でもないシーンが怖い。トッド・フィリップス監督に拍手。ヒドゥル・グドナドッティルの音楽も不穏で心に響く。

ただ、無敵感というのかな。自意識の暴走? 自分にはもう何も失うものはない。だから何でもできる…という怖さ。そこが問題だ。
映画表現だということがわかっていない若い人が観ると…その部分だけの影響を受けてしまうかもしれない。映画と現実をゴッチャにするかもしれない。
優れた作品には毒がある。でも、配慮は必要だろう。だから、むやみに「よかった。観たほうがいいよ」という気にはなれない。

ジョーカーは自分を不当に扱う者には容赦をしない。映画の時代設定は少し昔だが、現代社会が生み出した狂気…と深読みさせる。これぞ映画! でも、映画を観て幸せになりたいってタイプの人には向かないかもね。ゲシュタルトの崩壊というか…気が滅入るかもしれない。

人生は悲劇か喜劇か。怖い映画だ。でも、最高の映画だと思う。

実はさりげなく『バットマン』につながっている。わかる人にはわかる。そこがニクい。
昨今はヒットすると続編がつくられるが、この『ジョーカー』にそれはないだろうな。


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