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散り椿を観て椿三十郎を思うもエ~ガね

公開初日、初回に『散り椿』を観た。監督・撮影/木村大作、脚本/小泉堯史…という黒澤監督のふたりの弟子による作品だ。
とても綺麗な映画だった。どこをカットしても絵になる。丁寧につくられていた。でも、映画の感想が綺麗というのはいかがなものか…。

https://youtu.be/6Ov428Ffqkc

タイトルに同じ椿の付く『椿三十郎』を思い出した。いわずもがなの黒澤明監督作品だ。映画的にリアルで、不正に立ち向うという点では『散り椿』にも通じるが…とにかく、内容がおもしろかった。カンペキな脚本と演出。ユーモアがあり、美術としてもすばらしかった。
あくまでもドラマが主であり、美術はドラマの向こうにあるものだと黒澤監督は伝えていたと思う。
わしは黒澤作品が好きですべて観ているが、この『椿三十郎』は特にお気に入りで何度観たかわからない。

黒澤監督が草葉の陰でくやしがるような映画を期待していたんだけど…。
でも、岡田准一が武士(もののふ)の顔をしていて、すごくいいね。殺陣もユニークだった。ただ…主役が大きく見えるようにキャスティングなどの配慮があってもよかったんじゃないかな。たとえば田中屋を小柄な人にするとか。黒澤映画での三船敏郎が大きく見えたように。

木村監督の『剱岳 点の記』は山岳映画だから、綺麗であることが内容に直結していた。
『散り椿』もオールロケにより綺麗だ。新兵衛と篠とが互いを思う気持ちも誠実で綺麗だった。だがもしも、おもしろさよりも綺麗さを優先しているとしたら…少し違う気がする。藩の不正や権力争いが絡むならば、メリハリというか…綺麗さを浮き彫りにするためにも人間の汚さとか内面を、もっとドラマチックに描く必要もあったのではと感じた。

至近距離での新兵衛と采女の対決は、三十郎と半兵衛を思わせるものの…なぜ戦わねばならないのか釈然としなかった。そこが少し弱い気もする。
あぁ、椿は散ったのか。今は葉室麟の原作小説を読んでみようと思うばかり。

でも、『散り椿』ではスタッフロールでのそれぞれの名前が各々の手書きで新鮮だった。まるで寄せ書きのような手作り感があって好きだった。

検察側の罪人を考えるもエ~ガね

知り合いから『検察側の罪人』がよかったといわれた。わしは人から薦められると必ずその映画を観る。自分好みの映画ばかりだと偏ってしまうからだ。
観る直前になって…薦めた人は熱狂的なキムタクファンだと知った。心配になった。ファンならどんなデキでもよかったというだろうから。

しかし、監督は原田眞人だ。『駆込み女と駆出し男』『日本のいちばん長い日』『関ケ原』が好きだった。原田監督ならハズレはない気がする。そう思って…観た。

https://youtu.be/wzvmvESzuv0

公開中なので内容には触れられないが、許される範囲で書いておこう。何さま発言をお許し願いたい。

オープニングのクレジットデザインが美しい。シンメトリーの都会の風景に引き込まれた。

木村拓哉ことキムタク扮する最上はベテランのエリート検事。二宮和也ことニノ扮する沖野が若手検事で、タイトル通りに検察側の罪人を描いている。

法を越えて裁きを下す『イコライザー』という映画があったが、それに通じる。『黒い警察』というのもあったな。いわゆる、ダークヒーローものにある自警。テレビ時代劇の「必殺」ものの構図だ。
検察側の正義とは何か。正義の名のもとに個人が罰を下すことが許されるのか。そういう犯罪映画だった。

『シン・ゴジラ』の影響もあるのか、『関ケ原』では早口のセリフが聴き取りにくかった。『検察側の罪人』でもそれがいえる。字幕がほしいと思った。ときに小声だったりもするし。でもそれがドキュメンタリーのようなリアル感を出している。

キムタクは新境地を開拓したかも。最上に感情移入できるかが問題なのかもしれないが…。
最上側で観るか、沖野側で観るか、吉高扮する橘側で観るか。あるいは…。
キムタクもニノも吉高由里子もよかったが、脇のウサン臭いオッサン連中が特によかった。その中でも、被疑者の松倉を演じた酒向芳はキョーレツな印象を残す。特筆に価すると思った。助演男優賞ものだろう。

キムタク主演の映画では『武士の一分』があった。わしはテレビがないのでよく知らないが、ドラマの「HERO」は若手検事役じゃなかったかな。そうか、もう若手でもないんだなぁ。
ニノのほうは『硫黄島からの手紙』が印象に残ってる。『青の炎』も観たな。
わしは俳優で映画を観るということは…あまりしない。監督で観るほうが多い。多分、あくまでも作品として監督的な視点で映画を観ているんだろうと思う。

原田監督を知ったのは『ラスト・サムライ』だった。俳優として出ていた。
今、雫井脩介の原作を読もうか迷っている。『関ケ原』では独自の解釈で原作の小早川に味付けしたように、原作の「検察側の罪人」のどこをどう変えたのか…興味がある。
政界のことやインパール作戦など記憶の源流ともいえる部分は原田監督が加味したんじゃないかな。原作はもっとストレートだという気がする。

映画はある意味、監督との闘いだ。想像を強いる作品だったので、わしもフル回転で考えた。これは映画用のラストであって、原作では違うだろうというのは想像がつく。
今はCG技術があるんだから、若いときの映像をつくることもできたのでは…とか、実はいろいろと考えた。これがわしの映画のたのしみ方なのでカンベンしていただきたい。岡田准一と池松壮亮でやったらどうなっただろうなどと想像してみたりもした。

結論として、映画『検察側の罪人』は確かによかった。
ただ、キムタクとニノを使ったことによってトクをしたのかソンをしてるのか。そりゃ、このふたりのファンは観るだろう。でも、肝心の一般の映画ファンはアイドル映画だとケイエンするかもしれない。彼らが主演だから観ないという人もいるだろう。
だとしたらモッタイナイ話だ。汚れた正義というか、しっかりと社会派映画になってるのになぁ。

それにしても、検察庁とか検察の仕事というのは…アタマのわるいわしにはとても難しい。


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