おみおくりの作法を知るもエ〜ガね

『おみおくりの作法』を観た。
これまでその存在を知っていたが、観てなかった。ハウツーもののような…何より『おくりびと』の二番煎じを感じさせるタイトルに観る意欲をなくしていた。
原題の「STILL LIFE」を『おみおくりの作法』としたのは…やはり、『おくりびと』のヒットにあやかったということかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=4k_rhRcklFs

観てよかった。しみじみ…よかった。
映画好きの友人が薦めてくれたのだ。わしには映画ファンの仲間がいる。ネットも含めて…。その人たちが「アンタ好みの映画だよ」と紹介してくれると、必ず観る。ハズレがないからだ。
わしがウダウダ書くとき「いい映画がありましたよ」という報告と同時に、映画のことを教えてほしいというのがある。

『おみおくりの作法』は監督がウベルト・パゾリーニで、主演はエディ・マーサン。イギリスとイタリアの合作で、2013年の制作。

主人公のジョン・メイはロンドン市内の民生係で、孤独死した人の葬儀に関わっている。几帳面なジョンは故人の身寄りを調べて訪ねたりもする。弔う人がいなければ火葬だけで簡単に済ますことができると上司はいうが、彼は一人ひとり丁寧に対応していく。

寡黙で静かな映画。人生には黙って寄り添える相手がいればいい…みたいなセリフがあった。人の温かさがしみじみ伝わってくる映画だった。言葉に頼っていない点も好感を持つ…。
特に、ラスト部分は言葉による説明がまったくない。感動的だった。底知れぬ闇の中のほのかな光か…。それこそ、黙って寄り添ってくれる映画だろう。

いわゆるミニシアター系の映画だと思う。地味で暗い映画をイメージして敬遠していたが、いや…実際その通りだが、とても好感を持った。確かに…身につまされるということもあるにはある。でも、わしはこの『おみおくりの作法』が映画として好きなのだ。

音楽もよかった。音楽はレイチェル・ポートマンらしいが、しみじみとよかった。CDを探してみようと思う。

ショージとタカオを悼むもエ〜ガね

新聞の小さな記事で知った。布川事件の…タカオ氏が亡くなった。ドキュメンタリー映画を思い出す。
20歳で逮捕されて、64歳で無罪ですよ。自由になってから何年生きられたんだろう。 人生、丸ごと返せッですよね。
あ、すみません。亡くなったのはタカオ氏。ショージとタカオというのは…ドキュメンタリー映画のタイトルです。

https://www.youtube.com/watch?v=s8CbiSmc1UM

これをおもしろいといってはいけないのかもしれませんが、何年前になるのか…渋谷の[アップリンク]でおもしろい映画を観ました。『ショージとタカオ』という井手洋子監督の構成・撮影・編集によるドキュメンタリーです。「さしさわりのある映画特集」での特別上映でした。
以下はその当時のわしの映画日記…。


1967年に茨城県布川で強盗殺人事件が起き、その頃…不良だったショージとタカオはその犯人にされ、投獄されたのです。そういうことのようです。その後、ふたりは獄中から無実を訴えつづけて29年…。
仮釈放されてからのふたりのオッサンを13年間追ったドキュメンタリー映画。トータルで14年間の…冤罪に関わる記録がこの『ショージとタカオ』なのです。
小柄でガッシリしたショージと長身でヒョロッとしたタカオは…アボット&コステロのデコボココンビみたいで絵になりますね。

ヒネクレ者のわしなんか、ショーン・コネリーが主演の映画『理由(JUST CAUSE)』を思い出しました。冤罪だと信じて外に出したら実は…みたいなドンデン返しがラストにあるのかもなんてトンデモナイことを思ってしまいそうでした。 考え過ぎです。映画好きの弊害ですな(笑)。

この『ショージとタカオ』という映画、冤罪という重いことを描いていながら、決して重くはありません。リアルに伝わってくるものの…大上段に、警察の取り調べとか検察とか裁判とか司法制度を問うている映画ではないのです。そういう点では、花輪和一の体験マンガを映画にした崔洋一監督の『刑務所の中』のユーモアにも通じるのかもしれません。

かつて、「普通の女の子に戻りたい」と芸能界を去ったキャンディーズがいましたが、ここでは「普通のおじさんになりたい」という懸命なふたりのオッサンの姿を…上からでも下からでもなく、普通に記録しているのです。この普通さにとても好感を持ちました。
思わず笑ってしまうようなことも起こる。獄中に29年いて娑婆へ出たら、それこそ浦島太郎状態ですからね。例えば、20円だった電車賃は今、ずっと高い。切符の買い方もわからないとか、女子高生のスカートの短さに驚嘆するとかね。

20歳くらいで投獄されて、仮釈放されたのが50歳くらい。つまり、青春のすべてを獄中で過ごしているわけです。すごいことですよ。
やっと塀の外に出たのに…いろいろな新たな見えない塀が立ちふさがる。しかし、生きることへのオッサンパワーはすごい。就職が厳しいと「塀の中は3食付きだったからなぁ」なんてグチも出るものの…立ち向かって切り開いて行く。すごいですよ。

『ショージとタカオ』は決して芸術性の高い映画ではありません。最初のあたりはカメラもフラついてますしね。素人っぽい感じも受けます。
でも、生きる…生きている実感がある。活力がある。希望がある。わしが希望をもらったってことですけどね。わしはずっと娑婆にいるんだから、負けずにがんばらなくちゃってね。

気が重くなるような映画だろうと覚悟していたんですが、ここまでポジティブなエネルギーがもらえるなんて驚きでした。
30年近くも獄中にいた者ゆえでしょうが、梅の花の香りとか…日々のほんの些細なことの中に生きていることを発見する。そのことのありがたさを噛みしめている。人生を取り戻して…紡いで行く。そのオッサンの姿。わしは心打たれたのです。それを抽出したのは井手監督の手腕でしょう。


映画が終わってから、井手洋子監督らと近くの居酒屋で呑んで語り合いました。仮釈放から3カ月くらい撮るつもりが長くなったとか、費用がいくらかかったとか、英訳を付けて外国でも公開したいとかね。たのしい語らいの時間でした。映画制作への夢というか、まだわしにも情熱が残っているようです。

CG映画ばかりで食傷気味のこのごろ。マイケル・ムーアじゃないけど、今おもしろいのはドキュメンタリーかもしれません。
2時間半以上の長尺の『ショージとタカオ』ですが、最後までおもしろく観ることができました。その昔、原一男監督による『ゆきゆきて、神軍』というすばらしいドキュメンタリー映画がありましたが、それに匹敵するかもしれません。


タカオ氏の冥福を祈ります。合掌。



嗤う分身をわらうもエ〜ガね

奇妙な映画を観た。『嗤う分身』という不条理もの。ドストエフスキーの「分身」をベースにしているらしい。時代も場所も何だかよくわからない。でも、ハチャメチャなようでいて…奇妙な統一感がある。演出というか美術には『未来世紀ブラジル』を感じたりもしました。
監督はリチャード・アイオアディです。

https://www.youtube.com/watch?v=ZUqHkgTWdsY

小心者の主人公の前に、自分ソックリのやり手の男が現れる。双子の男優を使っていると聞いた記憶があったが、主演はジェシー・アイゼンバーグだから、それはあり得ない。わしの勘違いというか…妄想だろう。相手役はミア・ワシコウスカ。ブリジット・フォンダかと思っていたので、わしの記憶もグチャグチャなのだろう。

友人がこの映画を観るよう推薦してくれた。彼は映画通なので、彼が観るようにいえば必ず観る。彼とは東京に来てから出会ったが、なぜか子どもの頃に出会った少年を懐かしく思い出す。

子どもの頃のわしは山奥に住んでいた。毎年、夏休みになるとその少年は…東京から隣の家にやって来た。わしと同い歳だったこともあり、隣の家に来るとわしに会いに来た。彼とは会話らしい会話はなかったが、わしはセミの取り方とか田舎の遊びを教えてあげた。彼は感心したようにそれをまねていた。でも実は、わしは彼の持つ都会のいいとこの子という雰囲気に憧れていたのだ。
やがていつしか…時は流れ、彼は北海道で医者になったと噂に聞いた。今は院長先生だろうか。あるいはそれも引退しただろうか。ともかく、子どもの頃に会っただけの遠い遠い思い出…。

東京に出てから、わしは…この映画を推薦してくれた映画マニアのその友人に出会った。彼は東京生まれで、「ゴジラが上陸してきたとき、ぼくの家(ミニチュアの街セット)は壊されたんだ」と自慢していた。会った瞬間…一緒にセミ取りをした少年を思い出した。やがて、記憶がゴチャゴチャになり…今では彼とセミ取りをしたような気さえする。
ハッキリしているのは…わしも彼も、“不思議惑星エ〜ガね”の住人だということでしょう(笑)。

とにかく、『嗤う分身』は奇妙な映画です。そこには昭和の歌謡曲が流れる。とてもシュールなのです。でも、そこに『複製された男』のようなリアル感はない。軸足はコッチではなく、最初から不条理なアッチの世界に行ってしまってる。
好き嫌いの分れる作品でしょうね。
クリエーティブな人というのは…つくっている間は向うの世界に行ってるのかもしれない。そういう意味ではクリエーティブな人向きの映画かもしれません。

https://www.youtube.com/watch?v=Rfr9QY2GFzE

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