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複製された男になるもエ〜ガね

この気だるさは何だろう。わしの好きな映画はこういうタイプなのだとつくづく思う。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『複製された男』の話です。DVDで観ました。分類は何かな。心理ミステリーでしょうか。わしのカテゴリーでは「幻想」としておきましょう。

「カオスとは未解読の秩序である」とかって言葉からこの映画は始まるのです。

https://www.youtube.com/watch?v=dHlX3T9RJAc

主人公は大学で「独裁者は民衆を支配することに取り憑かれた」とかって講義をしている。「知識や情報までも独裁者は管理した。そして、その支配は繰り返された」と…。「人は何かを記憶するとき、そのときの感情に支配される」とも…。
これが映画のキーワードです。ゾクゾクしますな。

主人公はDVDで映画を観て、そこに自分ソックリの脇役を見つける。そして、彼を追求するのです。
彼は自分のコピーなのか。いや、彼がオリジナルで自分が複製なのか。クローンなのか、SFなのか。パラレルワールドの異世界が重なったのか。いや、そんなありきたりじゃない。
彼は自分の思いの中か。いや、自分が彼の思いの中か。すべては幻想なのか。独裁者が支配したように、彼は自分の思考に支配されていくのかもしれません。

カフカの「変身」を思わせるイメージ。街にそれが蠢くイメージは特に好きですね。実は…中央線に乗って車窓から高円寺とか阿佐ヶ谷とか荻窪あたりの街を観ていてイメージするビジュアルがあるのです。それによく似ていたんですよ。

主演はジェイク・ギレンホールで、彼が出た映画ではわしの大好きな『ドニー・ダーコ』があります。この『複製された男』も『ドニー・ダーコ』と同じように…気だるく幻想的です。
考えてみれば、わしもこんなふうな夢か現実かわからないような日常に生きているのかもしれませんな(笑)。

孤独な現代人の苦悩。アイデンティティの危機をミステリー仕立てに描く。ポルトガルのノーベル賞作家、サラマーゴの「複製された男」…。
というわけで、映画がとても気に入ったので…原作を探して見つけました。わしの解釈が間違っていないか、確認してみたい気持ちもあったからです。これぞ、オリジナルの探求ですな。


太秦ライムライトに黄昏れるもエ〜ガね

20代の女性と話したときのことです。彼女は三船敏郎を知らなかった…。若い世代はもう、そんなものなんですねぇ。
それくらいだから、福本清三なんて知らないでしょうねぇ。

https://www.youtube.com/watch?v=2DkvIhuL8x0

DVDで『太秦ライムライト』を観ました。
太秦はうずまさと読み、京都にあった時代劇映画の撮影所です。昔は東洋のハリウッドなんて呼ばれたこともあったみたいです。

ライムライトとは撮影のスポットライトのことで、『太秦ライムライト』はチャールズ・チャップリンの『ライムライト』をモチーフにしています。『ライムライト』は大好きな映画なんです。チャップリンが素顔で出ていて、それだけで切なくなったものです。若者の登場に老人は消える…そういう映画でした。

福本清三という人は“斬られ役”俳優です。たくさんの時代劇に出ています。でも、俳優としてはほとんど…というか、まったく知られていません。斬られる役一筋の映画人生ですからね。大部屋のやられ役ですから、顔さえもまともに映らない。まさに、斬られるために生きる、ですよねぇ。
イナバウアー式の斬られ方には…彼の主張もあったのかもしれませんね。つまり、画面に顔が出ますからね。

『ラスト・サムライ』で、トム・クルーズが扮する主人公の世話をする老いた侍がいました。最後に一言だけセリフがあった。彼が福本清三ですね。といっても、どれだけの人が覚えているでしょうねぇ。

監督は落合賢。脚本は大野裕之です。時代劇が衰退して…“斬られ役”がなくなった彼のために、いや太秦のために…いや映画そのもののために、皆で力とお金を出し合って…スポットライトがあたらなかった福本清三を主人公にこの“写真”をつくった。そんな感じを受けました。
美しい映像です。撮影はクリス・フライリクという人。外国人だからこそ、日本人よりも日本の美が見える…ということはあるでしょうね。

活動屋たちの映画愛と哀愁。それが『太秦ライムライト』です。オリジナルストーリーですが、どこかドキュメンタリーのようでもありましたねぇ。

福本扮する香美山に、女優のタマゴのさつきが殺陣(たて)の指導を求める。さつき役の山本千尋の眼差しもよかった。彼女は撮影時、10代じゃないのかな。
福本清三70代にしての初主演作。どうしたって、昔はよかった的な老人映画になってしまうわけですが、「一生懸命やれば、どこかで誰かが見ていてくれる」という言葉には心が揺れましたよ。

https://www.youtube.com/watch?v=Ecfr_hYKdjc



どこかで誰かがといえば…最近、映画の試写会招待状が届いたんです。
わしの映画日記を読んで送ってくれたのかもしれませんなぁ。
小田純平の「夢のてっぺん」でも唄いたい気分ですよ。




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