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封印した影なき男を追うもエ〜ガね

時間調整のために、新宿で『イコライザー』を観ました。ポスターのデンゼル・ワシントンの姿だけで観た。こんなふうに何の予備知識もなく真っ白な状態で観るというのはいいものですね。クロエ・グレース・モレッツが共演ということも知らず、すべてが新鮮でした。後でアントワン・フークア監督の作品と確認しました。

この映画を観たのは時間が合ったのとデンゼル・ワシントンが好きだったからですが、なぜ好きかといえば…彼はどこかシドニー・ポワチェを思わせるからかもしれません。

http://www.youtube.com/watch?v=4GGjX9r4JUI

観終わって、『マイ・ボディガード』他、いろいろと思い出しました。



殺人の経験がある。殺人を犯して…山中の土に埋めたことがある。大昔のことですが、そのことを夢の中で思い出して飛び起きたことがありました。 いや、正しくは…そのことを記憶の中に封印していて、夢の中で思い出すという『インセプション』にも負けない夢を見たんです。
起きて…真っ青になって震えながら考えました。汗をたらしながらいくら考えてもそんな記憶はない。やはり単なる夢で…安堵したものです。
ものすごく怖かった。

どうしてそんな夢を見たのか。心あたりがありました。
子どものころ、クワで土堀りをしていて…偶然、冬眠していたカエルの首をちょん切ってしまったことがあったのです。そのときのカエルの何ともいえない恍惚とした表情…。首がないのにヒクヒクと動いていたカエルの体…。それがすごく怖くて、わしは慌てて土に埋めました。
もしかすると、そのカエルの中にはコロポックル(アイヌ民族に伝わる小人)が入っていたのかもしれないとか、そんな子どもっぽい想像も加わり…怯えました。
きっと、そのときの記憶が殺人となって夢に出てきたんでしょうね。

封印ってわけでもないけど、遠い昔、子ども時代には昆虫とかヘビとか…そういう小さな生物を殺生をしたことがあって、悼みたい気持ちです。

大人になってから、上記の夢と重なるような映画を観ました。
ダムで山村が沈むので、その前にカヌーでの渓流下りを計画して実行する話でした。すると、川下りの途中で崖の上から何者かに矢か何かで狙われて、それをやめさせようと争っているうちに相手を殺してしまう。その遺体を山中に埋めて、そのまま川下りをつづけて…今はあの現場もすべて、ダムの底に沈んでしまった。主人公はそのことを封印しているみたいな内容でした。
映画には妙な現実感があって…妙に怖かった。何という映画だったんだろう。

いや、もしかすると…わしが上記の怖い夢を見たのはこの映画を観たあとだったのかもしれません。この映画と少年時代のカエルの記憶がミックスされて…怖い夢となって現れたのかもしれない。
そういえば、この映画のことでは師匠のF先生と語り合ったこともありましたね。


都会から離れた大自然の中で生きるか死ぬか…みたいな映画はたくさんあります。
例えば、『パーフェクト・ゲッタウェイ』というサバイバル風アクションサスペンスを観ました。デビット・トゥーヒー監督で、主演はミラ・ジョボヴィッチ。ハワイ諸島の自然にまぎれた殺人犯が…というような怖い話。
この映画は新鮮というか…オチが読めなかったですね。そう来たかって感じでした。

『イコライザー』を観て思い出した映画があります。
それが昔観た『影なき男』で、わし好みの映画でした。
ロジャー・スポティスウッドの監督作で、シドニー・ポワチェの久々の主演でした。今ではデンゼル・ワシントンとかウイル・スミスとか黒人俳優ってたくさんいますが、彼はいわばその先駆者でしょう。黒人俳優で初めてアカデミー賞主演男優賞を取ったのがポワチェではなかったでしょうか。

『影なき男』は山岳アクションサスペンス。シドニー・ポワチェ扮するタフガイ刑事だかFBI捜査官だかがワシントン山中に逃げた凶悪犯人を追って行く。登山ガイドの協力も得て…山岳サバイバル風。相手は登山グループの中に潜み、単なるハイカーなのか犯人なのかがわからなくなっていくのです。
黒澤映画の『野良犬』の駅での場面みたいに、誰が犯人か、皆が犯人に見えてくるみたいな…。

そして、この映画を思い出すと…イモヅルのように記憶がつながっていって、上記のゾッとする夢までも思い出すのでした。 わしの頭の中はグチャグチャになってるようです。イモ掘りホ〜イ!

肝心の『影なき男』のYouTube画像がないか探してみました。影もありません。
ある意味で、『イコライザー』こそが“影なき男”かもしれませんけどね。

海と毒薬に怯えるもエ〜ガね

人が何かを書いて伝えたいと願うときは、何か変化があったときかもしれません。わしがこの映画日記をスタートしようと思ったのは…病気をして手術して、生を得たことが大きいでしょう。
ありがとうという感謝の気持ちからです。お世話になった身近な人への感謝…。森羅万象への感謝…。
そこには映画への感謝もあったし、よかったと思った映画を思い出して記録しておこうという気持ちもありました。

http://www.youtube.com/watch?v=hAhrZveu4bo

熊井啓監督が亡くなったのはいつのことでしょう。確か…くも膜下出血でした。わしの友人でも、この病気で何人かが倒れています。

わしは『サンダカン八番娼映画館・望郷』など、熊井作品の多くを観ています。歴史の暗部を描くといいますか、マジメな直球勝負の社会派映画って印象が強いですね。

その中でも特に記憶に残っているのが『海と毒薬』です。原作が遠藤周作でした。戦中の米軍捕虜の生体実験を扱っています。
病院という密室内部では何が起こっているのか、わしらにはわからない。モノクロ映画ですが、この作品は怖かった。映画としては静かなだけに、よけい怖かった…。忘れられません。
奥田瑛二と渡辺謙の出演ですが、もしかするとNHK大河の「独眼竜〜」よりも前で、当時の渡辺謙は無名だったかもしれません。

熊井監督はご近所にお住まいで、ご近所の病院で亡くなられたんだと記憶します。そういえば、黒澤明監督が残した企画の『海は見ていた』を引き継いだのも確か…熊井啓監督でしたね。

万感の思いで赤ひげを観るもエ〜ガね

路地で風がクルクルと舞って、カラフルな落ち葉たちが集まっていました。そこに…葉っぱのフレディもいたのでしょうか。葉っぱの一生を描いた絵本がありましたよね。

義兄が亡くなりました。悲しいということより、もっと大きく空虚な…寂寞の思いでした。告別式での喪主である甥の言葉を聞きながら…時の流れ…生のうつろいというものに思いを馳せたのです。


http://www.youtube.com/watch?v=agGgFkq-uMA

「死とは荘厳なものだ」という言葉がありましたね。黒澤明監督の『赤ひげ』のセリフの中にです。

娯楽映画として単純におもしろさでいえば、『用心棒』や『椿三十郎』などのほうがおもしろいでしょう。でも、質というか…そういう尺度では『赤ひげ』のほうが上だという気がするし、実際…黒澤作品の集大成だと思います。 わしの大好きな作品です。

原作は山本周五郎の「赤ひげ診療譚」。脚本は井手雅人、小国英雄、菊島隆三、そして黒澤明。ここに橋本忍が参画していないのが残念ですが、ベストの黒澤組シナリオチームでしょう。 基本的に3つの話で構成されています。
美術は村木与四郎。音楽は佐藤勝。撮影が中井朝一と斎藤孝雄です。それぞれのみごとな職人技が、黒澤監督によってバランスよくひとつになっていると思います。

“死”が荘厳ならば、“生”もまた同じ。“死”の映画でありながら、実は“生”の映画です。強く、やさしく、温かく、しかもユーモアも交えて前向きのエネルギーが伝わってきます。そこが好きです。

その昔、黒澤監督を使ったテレビCMで、「天使のように大胆に。悪魔のように細心に」というのがありました。これは黒澤映画の本質をよく表していますね。

さすがは黒澤演出なのです。静と動のメリハリがいい。光と影のコントラストがいい。エンターティメント、芸術性、テーマやメッセージ性など、そのバランスがいい。わしは『赤ひげ』のそこが好きです。185分という長尺がちょっと気になりますけどね。

わしは黒澤映画で泣くことはないのですが、この映画だけは何度観ても同じところで泣いてしまう。おとよに泣かされるのです。保本医師に対するおとよにです。いえ、悲しくてではなくて、うれしくて…です。すばらしい…黒澤映画のヒューマニズムですね。

おとよと仲良しになるのが長坊です。彼は次の『どですかでん』の主役です。のちに東宝でフランケンシュタインの役を演じたりして、『乱』ではエキストラまでしています。そうして、晩年の監督を支えていたんですね。

蘭方医学を学んだ若い保本医師を演じるのが加山雄三で…映画は彼の成長をも描いているのですが、その許嫁が「白馬のルンナ」の名曲(!?)で有名な内藤洋子です。いやぁ、実に清楚で美しい。
そして、何といっても三船敏郎の“赤ひげ”が見事なのです。役者としても、三船敏郎の集大成でしょう。実際、この映画が最後の黒澤映画出演になりましたしね。


とにかく、まだ観たことのない人は…是非とも観てほしいのです。黒澤映画はあまり女性に人気がないような気もしますが、この映画は特に女性向きかもしれませんよ。

デビュー作からの黒澤映画全30作の観賞を登山の稜線歩きにたとえれば『赤ひげ』が最後のピークで、それからあとの作品は下山コースになるのではないでしょうか。
上高地から穂高の稜線に取りつく。最初の西穂は『姿三四郎』です。そして、奥穂高など荒々しい岩壁の穂高連山のピーク歩きをして…槍に到達。槍ヶ岳が『赤ひげ』です。そこからは表銀座コースを下山ルートにして、穂高の山々を振り返りながら歩くのです。
言葉にならない大きなものを感じます。

http://www.youtube.com/watch?v=hG3k5O47XRY


ところでまったくの余談ですが、手塚マンガの「B・J」には…この「赤ひげ」の影響があるかもしれません。 また、マンガといえば、『乱』では…白土マンガの「赤目」に似ているシーンがありました。
マンガを読んでいる黒澤監督はイメージできないけど、ピークの人たちはそれぞれにいろいろと影響し合っているのかもしれませんね。

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