東京も梅雨入りしました。食べ物とかのカビが気になる季節ですね。
さて、カビの生えたような話になるかもしれませんが、今回はリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』のことを書きましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=uNxNqvpaat0この映画は何度か観ています。劇場公開はもちろん、ビデオやDVDでも…。
最後に観たレンタルのDVDはディレクターズ・カット“最終版”となっていました。最初の公開版の次に、やたらと長いディレクターズ・カット版が公開されたのです。記憶がハッキリしないのですが、わしが観たのはそれともまた違う感じでしたね。
この映画は…初回の試写で観客の理解が得られず、そのためにあとからブレードランナー役のハリソン・フォードのモノローグ説明を入れ、ラストには彼とレーチェルが去って行くシーンを加えたと伝えられています。でも、わしが観た“最終版”ではそれらがありませんでした。ラストも説明せずに歯切れよく終わる。ただ、長いディレクターズ・カット版にいたユニコーンはやっぱり出てましたけどね(笑)。
デッカード(ハリソン・フォード)の「寿司か…。逃げた女房に言わせりゃ寿司ってのは俺のことらしい。俺は冷えた魚みたいなんだとよ」 というセリフはありませんでした。わしはこのセリフに記憶があるけど、どのバージョンだったんでしょう。
情報によれば、『ブレードランナー』の制作何10周年とかで、再びファイナル・カット“最新版”が公開されたとか。どうやら、5パターンあるみたいですね。いったい、何度手直しをすれば気が済むんでしょうかね(笑)。チマチマと手直しされても、正直いってどこがどう違うのかわからなくなってしまいますよ。
たとえば、スピルバーグが『未知との遭遇』を公開後、手直し版の『未知との遭遇 -特別編-』を発表しました。かなり違います。でも、比較してみようと思っても、特別じゃない最初のはもう、どこでも公開していないのです(笑)。こういうのも困ったものですよ。
闇市の名残でもある吉祥寺のハモニカ横町…。そして、新宿のションベン横町。そこには『ブレードランナー』の雰囲気があります。それもそのはず、この映画はションベン横町や歌舞伎町をモデルにしていますからね。
「四つですか?」「二つで充分」とかね。『ブレードランナー』に出てくるセリフです(ションベン横町風の店でのハリソンと店主のやりとり)。
http://www.youtube.com/watch?v=q0qgiak-3bc http://www.youtube.com/watch?v=PYM6rG0A3X4ふたつは同じシークェンスですが、微妙に違うでしょ?
雨の新宿。これもこの映画にピッタリなのです。
そういえば前に行ったとき、新宿コマ劇場のあった場所が更地になっていた。今はもう、新しいビルがだいぶできただろうか。街が奇麗になるのはいいが、闇はどこへ追いやられるのだろう…。
『ブレードランナー』はフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」が原作で、映画は2019年11月の雨降るロスの街から始まります。酸性雨なのか、いつも雨です。人々はライト付きの傘を持って歩いています。
わしの大好きなヴァンゲリスの音楽が流れ(映像にピッタリ!)、まるでテリー・ギリアムの映画のような…けだるい新宿風の街並みが映し出されます。そこでのネオンや看板文字がユニークだし、雑踏の中から「何かヘンなもんが落ちてたぜ」って声の日本語が何度も聴こえます。何なんでしょう。そういうところがヘンでおもしろい。
この映画はデッカード(ハリソン・フォード)が主役というより、ルトガー・ハウアーらが演じたロイ・バティーたち…人間になりたいレプリカント(アンドロイド)の苦悩と哀愁を描いた作品ですね。
進化したレプリカントは“記憶(思い出)”を大事にしています。それが消えるときが自分が消えるとき…。つまり、“死”を意味します。もっとも、“死”とは人間など生きているものに与えられた表現であって、レプリカントには使われない。どんなに高度なロボットになろうとも…。悲しい話です。
『ブレードランナー』はヨーロッパ的な匂いのするSF映画だと思います。どこか、フリッツ・ラングの『メトロポリス』に近いものをわしは感じました。
リドリー・スコット監督は『エイリアン』でB級ぽいという批評を受けたので、『ブレードランナー』ではそれを払拭しようとしてるんだという陰口も公開当時は聞かれたものです。
この映画の世界を味わうには、JR新宿駅のサザンテラス口から出て、ホテルセンチュリーサザンタワーの20階にあるラウンジでひと休みするのもいい。そこからは新宿の高層ビル群の眺望が見事。レストルームは足元までガラス(!)で高所恐怖症の人にはスリリング。
そこからションベン横町に移動する。緩やかな下り坂は身体への負担が少ないし、高層ビルを近くから観上げるもいいでしょう。そこで食事をして、次に歌舞伎町を少し歩くもいい。威圧感のある都庁ビルも遠くに見え、まるで『ブレードランナー』そのものでしょう。雨が降っていればモア・ベターです。映画と違うのは空を飛ぶ乗り物がないことくらい…かも。
サザンタワーからションベン横町へのコースは、天国から地獄(?)って感じになり、それもこの映画の雰囲気を醸し出すでしょう(笑)。
あ、今はションベン横町とはいわず、思い出横町でしたっけ…。
http://www.youtube.com/watch?v=J_hYs1jBy8Y&list=PL8B5F54801C37FC19&index=2http://www.youtube.com/watch?v=Gb092WwMMaUそれにしても、感情を認識するというソフトバンクの“ペッパー”も…アシモフの「わたしはロボット」のように…自分で考えたりする日が来るのでしょうか。そして、いつかは『ブレードランナー』のレプリカントのようになっていくのでしょうか。
DVDラベル=ブレードランナー