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洗骨してもエ~ガね

吉祥寺の[バウスシアター]がなくなって久しい。と思っていたら、小さな映画館がポツリポツリとできた。[ココマルシアター]もそのひとつ。以前、支配人がチラシを配っているときに遭遇し、そのときから行ってみたいとは思っていた。

https://youtu.be/qkJfGKehOvE

ココロヲ・動かす・[ココマルシアター]で、前から気になっていた『洗骨』を観た。監督は照屋年之といってもピンと来ないが、ガレッジセールのゴリといえば多くの人がわかる。
お笑い芸人が映画を撮ったくらいに思っていたのだが、彼はもともと…日芸の映画学科で映画の勉強をしていたのだ。短編映画を何作かつくっていたらしい。ゴリ監督に拍手!

洗骨とは文字通り…骨を洗うことだ。沖縄の離島に残る風習で、風葬された死者の肉体がなくなり…骨だけ(ミイラ?)になったころに縁者によって骨を綺麗に洗うことをいう。
わしはフォークロア的なことに興味があり、そういう風習がある(あった)ことは知っていた。

他の映画で洗骨を観た記憶もある。もしかするとそれは…成島東一郎監督の『青幻記 遠い日の母は美しく』だったかもしれない。違ってたらゴメン。

ゴリ監督の『洗骨』の舞台は沖縄の粟国島(あぐにじま)。母親が亡くなり、その4年後、洗骨のために家族が集まる。映画『洗骨』はその様子を描いている。もっと暗く深刻な映画かと思っていたら、そこには笑いと涙と感動と…希望があった。重い映画だけど軽く観られる…みたいな。

映画のキャッチコピーは「バラバラだった家族をひとつにしてくれたのは、骨になった母でした」という。一言でいい表している。まさにそういう映画だった。
情けないほどのダメオヤジがよかった。ダメな娘がよかった。優秀といわれたダメ息子だって…みんなみんながんばってる。

命のリレーっていうのかな。だから、みんな…今の自分があるんだよな。おおきに! だんだん! なのに…わしはそれを途絶えさせてしまうようでゴメン。
小さな映画会社の試写室みたいな[ココマルシアター]で、ほっこりとそんなことを考えた。


不謹慎かもしれないが、ラストの場面では…ふと『2001年宇宙の旅』の最後のシーンを思い出してしまった。


わが母の記を語るもエガね

すばらしい映画を観た。タイトルを『わが母の記』という。

毎朝、喫茶店で出会う人が[新文芸座]で樹木希林追悼特集を観てきて、『わが母の記』がよかったと教えてくれた。タイトルしか知らなかった。わしはいわれれば必ず観る。いそいそとレンタル屋に出かけ、DVDを100円で借りてきて…観た。
本当によかった。

https://youtu.be/FJMRSJ80bMs

監督・脚本は原田眞人。井上靖の原作だ。自伝か私小説が原作だろう。わしは井上作品が好きで、幼きころ母親に捨てられたと思っていたとかって話は…何かで読んだ記憶がある。

俳優陣もよかった。主人公の小説家役を役所広司、娘役を宮崎あおい、そして…小説家の母親役を樹木希林。
カタツムリの瀬川くんやお手伝い役の真野恵理奈にいたるまで、それぞれの人たちが違和感なく、自然で…とてもよかった。

出だしは…まだ幼子だった小説家が母と別れる雨の日の場面。ほんの一瞬だが、若い母の姿。もちろん、樹木希林の娘…つまり、モックンの奥さんが演じている。
主人公は昔のことを思い出す。自分は母に捨てられたのだと…。その母も老いて、今はそれを責めることもできない。

小説家の娘の琴子も大きくなって「お父さんにとって家族は書くための題材でしかないんだ」といったりする。「親子は単純なものじゃない」と小説家はいったりもする。そんな作家的な日常…。
映画『わが母の記』は…秋の陽だまりのように暖かく丁寧に描いた原田作品だった。

感動した。しみじみとよかった。


自分の母親を思い出してみる。
母が亡くなったとき…わしは20代だったなぁ。
喜ばれたい、驚かせたい、認められたい、そう思って生きてきた。
でもその人はもういないんだ…と、がむしゃらに渋谷の街中を歩いたものだった。
男の子というものは…程度の差こそあるだろうが、基本的にはマザコン的なものがあるに違いない。


万引き家族に会うもエ~ガね

血は水より濃いのだろうか。本当にそういえるだろうか。幼子を衰弱死させた親がいるという。辛い。かわいそうすぎる。

新宿で『万引き家族』を観た。地味な映画なのに…老若男女で満席。さすがはパルムドール受賞の効果だ。

https://youtu.be/vMP3wysydDs

一見、フツーの家族だ。何がフツーかは知らないけれど…。
ニセモノ家族の中にあるホンモノの家族愛? モタレ愛? 目的はお金のためかもしれないが…奥にそんなものを強く感じた。突き刺さるというより、それがわしの心に静かに舞い降りてきた。
観終わってそんな気分だった。

人生の底辺で寄り添う孤独な魂たち。定収入は老婆の年金だけ。あとは“副業”に頼るしかない。

「いい」とか「わるい」とか、そんな教育的な映画ではない。淡々と彼らの日常を切り取って…ドキュメンタリーのように語りかける寡黙な映画だった。俳優陣も美術も自然で、気負いのようなものは感じなかった。彼らはあたり前のように…家族のようにそこに存在していた。

自然体の演技といえば、『故郷』という映画のときに宇野重吉を観てヨーロッパの審査員だかが「この人はボケた演技なのか。本当にボケているのか」と賞賛したという。『万引き家族』の俳優陣の演技はこの域なんじゃないかな。

家族、それはときに煩わしくも…大切な存在だろう。でも、その絆って何だろう。
あの少年はあそこで何を得て、どんな大人になっていくんだろう。あの女の子は…。

「さあ、ここは感動するところですよ」「泣くところですよ」と教えてくれるようなつくりの映画がある。その親切には興ざめする。
是枝監督は観客を信頼しているのか、そんなヤボなことはしない。観る側に委ねるのだ。感じ方や解釈は人それぞれなのだから。

是枝裕和監督の作品は『幻の光』『誰も知らない』からずっと観てきたが、ブレてないんだなぁと思った。もっとハデな映画を…とか、いわれたに違いない。でも監督は、誰に何をいわれようと自分に対して誠実に映画をつくってきたんだろうな。わしが一番心打たれたのはそこかもしれない。

この映画が評価されたことで、今後の邦画のあり方というか…方向性にも影響を与えるだろうか。


血は水よりも濃い? たかが水、されど水というのが『万引き家族』だったのかな。
血といえば、ふと、『逆噴射家族』を思い出したりもした。あの機長からのイメージで生まれたタイトルってこともあり、二度と観ることができなくなった映画だ。


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