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遥か彼方の…黒水仙を思うもエ~ガね

空気が澄んで…美しく遠くまで見渡せる。こんな日は『黒水仙』を思い出す。1946年のイギリス映画だ。

https://youtu.be/CZRzcLK1Ar0

映画のカテゴリーとしては“信仰”かもしれないが、“心理”としておこう。

シスター…つまり尼僧たちがヒマラヤ僻地に赴任して、異郷の地で伝道に奮闘する。
岩山の上にあるのが“モブ宮殿”で、そこを修道院にしようとする。しかし、言葉も風習も違う。
黒水仙とは香料の名前のようだが、現地の人の肌の色のイメージもあるんじゃないかな。

何よりも、その場所が美しすぎる。綺麗な空気。大自然。“裸の女神”と呼ばれるその土地は、彼女らの心を乱すほどに美しい。捨ててきた過去を思い出させるほどに…。
信仰と過去。多くは語らないが、彼女らも何かがあって尼僧になったわけだ。

聖職に身をささげるシスターのリーダーをデボラ・カーが演じる。映画としては寡黙だが、彼女の葛藤は痛いほどに突き刺さってくる。デボラの凛とした表情、それもまた…美しい。

脚本と監督はマイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーのふたり。映画美術のマジックか。見事な映像美を紡ぎだしたのはジャック・カーディフ。
原作はルーシー・ゴッデンらしいが、よく知らない。何か実話がベースにあるのかもしれない。

心が洗われるというか、美しい自然が今の自分を追い詰める…というのはわかる気がする。
舞台となった“モブ宮殿”は実際あの場所にあるのだろうか。今はどうなっているだろう。あるなら一度、行ってみたいものだ。

登山を復活させたわしだが、仕事のため今秋は行けそうもない。次の山行は来春かなぁ。

富士山で心の旅路を思うもエ~ガね

富士山に登頂した。30年くらい前に登っているので、今回が2度目。もっとラクかと思っていたが…前回よりキツかった。ヘロヘロになった。
考えてみれば当たり前か。わしは年齢とか…いろいろなことで自覚が足りない(笑)。

登山道は登山客で渋滞、というのは予想通り。山頂は新宿駅状態。各国の言葉も氾濫。
それより驚いたのは装備やファッションの違い。他の皆はまるでテニスにでも行くような軽いカッコ。わしはといえば…ニッカズボンだけはやめておいたが、靴もザックも何もかも40年前の山のスタイル。いやはや何とも…山出しヤローじゃった。

今回、障害を持つ人を含む60名での団体登山だった。未経験のことで勉強になったし、貴重な体験だった。楽しかった。


山はよく人生にたとえられる。オリオン座や流星を観ながら…ふと、『心の旅路』を思い出した。

戦争に行って砲弾を受けて記憶喪失になって、自分が誰かさえもわからない主人公。でも、収容された精神病院から抜け出して…だったかな、とにかく踊り子と出会う。月日は流れ、世話をしてくれるその女性を愛するようになる。

しかし、ちょっとした事故で主人公の記憶が戻り…逆にその人を忘れてしまう。誰か大切な女性が傍にいてくれたような気がする。そういう思いだけを残して…。部屋の鍵だけを残して…。

戦争に行く前の記憶が戻った主人公は実家に戻る。実は主人公は資産家の息子で、そこを継いで実業家になる。
実家では若くてかわいいエマ・ワトソン似の姪が「おじさま、おじさま」と慕ってくる。やがて、その姪と結婚という話になるのだが…。

記憶をなくしていた何年間を共にした最愛の女性。その人を思い出すことができるか、もとのふたりとして再会できるのか。それが『心の旅路』というピュアな作品だった。大人のラブストーリー。感動的だった。

よくある設定だし、この種の映画は他にもたくさんある。あの映画もこの映画も…。でも、マーヴィン・ルロイ監督によるこの映画は1942年の作なので、おそらくはこれが源流だろう。原作は1941年に発表されたジェームス・ヒルトンの小説らしい。

https://youtu.be/alMA9WVruZg

意地悪で不遜な発想だが、横道にそれてみる。もし、主人公が若くて美しくてかわいい姪のほうを選んで、記憶をなくしていたときの女性を思い出さなかったら? すると話はどうなっただろう。

かわいかった姪は結婚してみると性格がわるくて、金づかいも荒くてとか? 主人公はもうイヤッと思うが、今さら記憶喪失のときに出会った女性を思い出したとはいえず、泥沼ドツボにはまって抜けられず滑落人生? それとも…。

もしも、あのときに別の道を選んでいたら…というのは誰にでもあることだろうと思う。 


そういえば…すぐに見つかったけど、富士山では行方不明者が出た。美しい星空を見上げていたら別の道に入ってしまったようだ。う~む。美は迷いの原因のひとつかもしれないな。

ノクターナル・アニマルズを読むもエ~ガね

なんて後を引く映画だろう。頭から離れない。“夜の獣たち”とサブタイトルの付いた『ノクターナル・アニマルズ』のことをずっと考えている。

美しい。計算しつくされた美…視覚的に伝わってくる。と思ったら、そうか、監督のトム・フォードはファッション・デザイナーなのか。

https://youtu.be/AuNdHjQ3THU

サスペンスだがほとんど予告編で語られているし、ネタばれとか…そういう種類の映画でもないと思うので、深く内容にまで触れてみようと思う。ご容赦ください。


主人公スーザン(エイミー・アダムス)は人から羨まれるセレブ。でも、心は満たされていない。
そんな折、20年前に別れた夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた小説のゲラ刷りが届く。テキサスを舞台にしたその過激な小説のタイトルが「ノクターナル・アニマルズ(夜の獣たち)」なのだ。
最初のページには「スーザンに捧ぐ」の文字が…。

エイミー・アダムス扮するスーザンは目だけで気持ちを表現する。スーザンは思う。別れた夫はなぜ今になって自分に小説を送ってきたのか。まだ愛情が残っているからか。読み始め、その力強い小説に圧倒される。心の奥に秘めた衝動が蘇ってくる。

現実のスーザンは20年前を思い出しながら小説の世界を読み進んでいく。今と昔と小説。今は冷たく昔は温かく、小説は殺伐としている。色調分けされた三つ巴は相乗効果の中で溶け合い、小説の中の主人公トニー(ジェイク・ギレンホール)が過去の夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)と重なっていく。

スーザンは思い出す。なぜ、小説を書くのかと聞いたことがあった。彼は物語を生かしておきたいといった。死にゆくものを書くことで救うのだと…。もしかすると、あれから20年かけて彼はこの小説を書き上げたのかもしれない。
執念と情熱。彼にこれほどの才能があったのか。
自分の才能を今ごろ知ったかと気づかせるために送ってきたのか…。自分への恨みつらみなのか。仕打ちなのか。未練なのか。復讐なのか。愛なのか。

誰かを愛したら努力しろ。あきらめるな。失くしたら二度と戻らないんだぞ。スーザンは彼からのそんな言葉も思い出す。彼は自分を信じる強さを持っていた。あれから、私の人生は思わぬ方向に変わって、彼の長所までも憎むようになったのだろうか。
スーザン自身、わからない。後悔? ただ…心の闇だけが彼女を包み込む。

わしは『メッセージ』のエイミー・アダムスのファンだし、『ドニー・ダーコ』からのジェイク・ギレンホールのファンでもある。『ノクターナル・アニマルズ』は助演の俳優陣もよかった。
紡ぎ織りなされた『ノクターナル・アニマルズ 夜の獣たち』のことを、わしは今なお…考えている。自分自身にも通じることがあるからだろうか。


答えはない。わからない。観る者が自分なりに考える映画だ。
わしはふと、♪いつの日にか 僕のことを 想い出すがいい♪と唄った来生姉弟の「夢の途中」を思い出した。一般的には薬師丸が唄った「セーラー服と機関銃」のほうが知られてるかな。


マジカルガールでSA-RA SA-RAになるもエ~ガね

仲間とポップカルチャーがらみの話をしていたら『マジカル・ガール』につながった。フランス…いや、スペイン映画かな。予備知識なしでウトウトしながらDVDを観ていたらよくわからなかったので…観直した。不思議な映画だ。分類が難しい。

https://youtu.be/owmCUm4lNFU

驚いた。冒頭、日本のアニメソングみたいなのが流れた。とても新鮮。調べたら…長山洋子の「春はSA-RA SA-RA」だった。

白血病の娘が日本アニメのファンで、父親は娘の願いを叶えてやりたいと思う。この親子の話かと思ったら、まったく別の…元女子生徒と元教師のほうにつながる。父親がラジオで娘の声を聴いていたら感動の物語になっていた? 
人生はおもしろい。パズルのように、ちょっとしたつながりで別のものになっていく…。

こっちがメインだったりする元女子生徒バルバラと元教師、何だか…昔観たフランス映画『白い婚礼』を思い出した。場面にはないが、教師はあんなふうに女子生徒に翻ろうされて今があるだんだろう。

『マジカル・ガール』は場面場面のつながりがおもしろい。実際にジグソーパズルも出てくるが、話がバラバラなようで…全体が予期しないほうにつながっていく。フィルムノワール? 見せないシーンはまったく見せない。
難解ではないが、余白で魅せる映画。そこがおもしろい。映画のラストはムナシイけれど…。

カメラワークもおもしろい。ヒキが少なく、フレームが固定されている。登場人物が路上で何かを拾っても手元がフレーム外で見えなかったりする。見せないモノはまったく見せない。マジックのように…。
フレーミングにマンガのコマを感じたのだが、監督はもともとマンガ家だったらしい。納得。

カルロス・ベルムト監督はかなりの日本通のようで、日本アニメが大好きなんだろう。日本的モチーフとして美輪明宏がらみの黒トカゲのドアマークも出てきたりした。検索サイトの“RAMPO”は江戸川乱歩かも…。興味深い。

「魔法少女ものじゃないじゃないか」と憤慨した観客がいたという。了見の狭さに笑ってしまう。
とはいっても、わしにとって印象深かったのは「春はSA-RA SA-RA」で、カラオケで唄ってみたら…唄えた。不思議だ(笑)。

アンダーテイカーでやさしい気持ちになるもエ~ガね

この映画の存在をまったく知らなかった。未公開作? レンタル屋で、忘れられたように1本だけ置かれていた『アンダーテイカー 葬る男と4つの事件』を観た。

おそらく、エディ・レッドメインが『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の主役に選ばれたことで、彼の主演映画が浮かび上がってきたのだろう。製作・脚本・監督がティモシー・リン・ブイ。

https://youtu.be/fE_i2504L34

4つの孤独な魂が絡み合う。死を望む牧師。死を宣告された男など。人は人を愛し…誰も彼も満たされず絶望の淵でもがいている。

主人公は葬儀屋をやっている人形好きの風変わりな青年。きっと、人付き合いが苦手なんだろう。ある日、彼が犬をはねたことで思わぬ出会いをすることになる。ヒロインはストリッパーのシングルマザー。彼女との切ないラブシーンがいい。

整理しきれないほどの思いが詰め込まれている感じを受けた。無難にまとまっているだけの映画より、未完成でも思いがあふれているほうがいい。とすれば、この作品は後者だろう。
犬はどこへ行ったんだろう。子どものことはもういいの? 全体が未分化というか、混沌としている。それでも、掃き溜めに鶴…というか、観終わって満たされた気分になった。
心地よい幸せな気持ちになれた。後味はわるくない。


阿佐ヶ谷の立呑み居酒屋でいい出会いがあった。その余韻の中で観たせいで『アンダーテイカー 葬る男と4つの事件』の印象がよくなった…というのは否めない。
やっぱり、人間ってすばらしい。ふと、映画なんて観なくてもいい人生を送りたい…という言葉を思い出した。


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