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グリーンブックがエ~ガね

西荻の店で『グリーンブック』を教えてもらった。観てなかった。DVDで観た。よかった。

黒人のピアニストがアメリカ南部を演奏旅行する。主人公は彼が雇った白人ドライバーだ。
1962年。当然…黒人差別がある。主人公がそれをどう切り抜けるか。ふたりがどうなっていくか。

監督はピーター・ファレリー。粗野なドライバーのトニーがヴィゴ・モーテンセン。天才ピアニストはマハーシャラ・アリ。

ピアニストのドクター・シャーリーはあえて差別色の強い南部に行く。「グリーンブック」とは黒人専用ホテルのガイドブックのことなのだ。
今でもだから…差別は強かっただろう。それをふたりの役者によって、堅苦しくなく描いている。爽快ですらある。よかった。

イジメや差別はどこの国にもあるだろう。変わり者だったわしも小さいとき差別された。

別の映画で、空を飛ぶ群れの鳥の一羽を着色して戻す…というのをやっていた。その鳥は仲間に殺されて落ちてくるのだ。
鳥たちからすれば、それくらい異分子が怖いのだろう。

そういう重いテーマを一級の娯楽作品にしてしまう。そこがアメリカ映画のすごいところだと思う。

https://youtu.be/awUd_khNEcc


この森で、天使はバスを降りた…もエ〜ガね

手元に「字幕の花園」という本があります。字幕翻訳家の戸田奈津子さんの著作です。映画好きのわしは当然、この人の名前をよく目にしていました。いつだったか何かで、翻訳料は(ヒット作であろうと)映画1本で20万円くらいだと聞きました。驚きましたよ。
おそらく、安いので彼女に依頼が集中したんでしょう。彼女にしても、字幕翻訳を安く請けることで仕事が広がり、映画人とも親しくなれるというミーハー的な計算があったのかもしれませんね。
ともかく、映画愛いっぱいの著作です。

今や字幕も、デジタルになってすっかり書体も変わりました。注意して観ないとそれに気づかないでしょうが、時代によって字幕スーパーの書体は微妙に違います。もともとわしは映画の「手書き」の字幕書体が好きでした。それは手塚マンガの手書きの文字にも似て、美しくて読みやすくて…魅力的でした。

もちろん、翻訳=意訳のおもしろさにも魅力を感じていました。たとえば、大昔の『カサブランカ』の「君の瞳に乾杯」というハンフリー・ボガードの有名なセリフは、原文では「Here's looking at you,kid」なんですね。大胆な意訳です。でも、何てシャレた翻訳セリフでしょう。

若い人の間では日本語吹き替え版を好む人が増えているようですね。わしは断然、字幕版を好みます。生の俳優の声を聴きたいですからね。
でも、知らない人も多いと思うんですが、実は外国映画を字幕で観る習慣があるのはほとんど日本だけなんですよね。他の多くの国では、映画は自国の言葉に吹き替える。だから、ハリウッドなどの俳優が日本に来て、自分の生の声で上映されていることを知り喜ぶんですよ。


原語の翻訳だけでなく、自分の気持ちを言葉にするのだって一種の翻訳でしょう。しょせん、言葉にできるのは気持ちの何パーセント。自分のほんとの気持ちを言葉にするのは難しいものです。言葉にしたからといって、理解してもらえるとは限らないですしね。
それを感じたのが…昔観た『この森で、天使はバスを降りた』という映画でした。

https://www.youtube.com/watch?v=sTCtlnZ4R9M

日本でいえば長野県とかのイメージの…森の奥の小さなギリアドという町に、バスに乗ってパーシーという若い女性がやって来る。町の者は彼女をよそ者として好奇の目で見て、排除しようともする。その軋轢を寡黙に描いています。

『この森で、天使はバスを降りた』はリー・デヴィット・ズロートフの監督作。主人公パーシーをアリソン・エリオットという新人女優(?)が演じていて、凛々しく孤独に満ちた表情が印象的でした。

ソソられるニクいタイトルですが、ちょっと覚えにくい(わしは「天使は、この森で〜」と覚えていた)。原題は『THE SPITFIRE GRILL』で、それは映画の舞台となる小さなレストランの名前です。スピットファイヤーとは戦闘機のこと。そんな説明はありませんが、背景にはベトナム戦争の影があるのではないでしょうか。『スピットファイヤー グリル』とすれば、『かもめ食堂』みたいなノリですが、アメリカ人なら原題から何かを感じ取ることができるのかもしれませんね。

テーマとしては「人を信じる」ということでしょうか。「人生のやり直し」や「チャンス」でしょうか。「人を表面的に見てはいけない」でしょうか。「人生は戦いだ」とか「戦いによって人の心を忘れてはならない」かもしれない。どれも、外れてはいない気がします。人間を讃え、信じようとしている作品です。

映画の中で、このギリアドという町を紹介する「道に迷う自然はあっても、都会のように人にまぎれる(迷う?)ことはない」という言葉があり、心地よく感じました。きっと、こういうところにテーマが隠れているんでしょうね。
森の冷たい空気感までが伝わってくる厳しい映画でしたが、温かい作品でした。

何かの拍子に、昔観た映画をふと思い出すことはありませんか? わしにとっては『この森で、天使はバスを降りた』がその一作です。いつだったか、レンタル屋さんで偶然見つけて…懐かしくて観たんです。内容はほとんど忘れてしまっていましたが、しみじみとよかった。
まったく話さない登場人物がいるんです。でも、実は多くを語っている。言葉はしょせん言葉ですよ。それを感じましたね。


「人は努力をしている限り、間違いを犯すものである」
そんなゲーテの言葉を思い出したネコタル爺でした。


僕の大事なコレクションにするもエ〜ガね

DVDで観た『僕の大事なコレクション』の話をしましょう。

http://matome.naver.jp/odai/2137107451227253801/2137113194451726203

まず、タイトルバックに流れる…懐かしく哀愁に満ちた音楽に引き込まれました。
過去は過去にすぎないのか。そんな言葉から、この奇妙な映画は語られるのです。その瞬間、わしはこの映画が好きになると思いました。映画はだいたい、最初の3分くらいのイントロを観ればわかる…というか、決まりますよね。

主演は『ロード・オブ・ザ・リンク』のイライジャ・ウッド。脚本と監督は…驚いたことにリーヴ・シュレイバーという性格俳優です。いろんな映画に出てますよ。これが初監督作みたいですね。2005年の作品です。
ジョナサン・サフラン・フォアの小説が原作で、イライジャ・ウッドがその作者の役ということなのです。 小説とはいっても、自伝的な要素もあるのでしょう。

主人公のジョナサンは、小さいころから家族にまつわる品をコレクションするのが趣味の変わった青年。部屋の壁中にコレクションを貼付けています。
余談ですが、わしも子どものころはお土産をもらったりすると、その袋とかをコレクションしてました。他の人から見れば、ただのゴミだったでしょうけどね(笑)。

わしのことはともかく、ジョナサンはコレクションの1枚の古い写真に秘められた記憶を求めて、先祖の地ウクライナ(今は情勢が不安定な…あの国)を旅するのです。通訳兼ガイドの青年(ユージーン・ハッツ)とその祖父(ボリス・リスキン)と一緒に…。
最初はコメディかと思いましたよ。基本的にはルーツ探しのロードムービーですね。

記憶の奥底に埋もれるものは何でしょう。記憶は老人の玩具に過ぎないのでしょうか。いや、過去の上に今があるはずなのです。心の奥底にあって、今に光を与えるものこそが記憶ではないでしょうか。ゆえに、記憶は…過去は大事なものなのです。

そういう感じの映画ですね。これ以上は書かないほうがいいかな。
あまり一般向きの映画ではありません。ですからお薦めはしません。でも、いい映画です。興味があればご覧ください。
といいますか、この映画を観た人はほとんどいないでしょうねぇ。

わしは映画を観ながら「わしだったらどんなふうにつくるだろう」とかって考えてしまうクセがあります。この『僕の大事なコレクション』を観て、「わしもこんな映画をつくりたいな」なんて思いました。

こうして書いている映画はぜんぶ…わしにとっての大事な宝物、コレクションですのぅ。


ところで、DVDに付いていた特典映像も観ました。そこには未使用の映像があったんですよ。オープニングとエンディングのお金のかかった別バージョン。でも、その映像は使用しなくて正解だったと思う。 なぜなら、せっかく地味に小さく温かくまとまってるのが豪華になるとピントがボケてしまうからです。

千利休が茶室に花を生けて豊臣秀吉を迎えるとき、外にある同じ花をすべて摘み取ったという話があります。その話を思い出しました。つまり、映画での編集の大事さを痛感したのでした。

ウクライナの美しくのどかな田園風景が出てきたせいなのか…鶴瓶が医者の役を演じた西川美和監督による『ディア・ドクター』をなぜか思い出したりもしたのぅ。


しみじみ思う。今日という日は、これからの人生のスタート日…。そんな気持ちで生きたいものですのぅ。
かくいうわしゃ…のぅといえる日本人じゃけんのぅ(笑)。

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